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下り坂をそろそろと下る [読書日記]

劇作家平田オリザさんの新書。経済成長第一の工業国から脱し、地域独自の「文化」を育む国作りへの転換を提案する。

目指すのは、子育て中のお母さんが、昼間に子どもを預けて、映画や芝居を見に行っても後ろ指を指されない社会をつくること。この視点が今の子育て支援対策に欠けているという。瀬戸内・小豆島や、但馬・豊岡市、讃岐・善通寺などの地域づくりを紹介しているが、いくつかの新しい概念やフレーズが心に残った。


その一つは、「関係人口」という考え方。自治体はこれまで、定住人口や交流人口を増やすことに躍起になってきた。小豆島は瀬戸内国際芸術祭、コウノトリの郷・豊岡は城崎国際アートセンターを核に、地元のイベントに定期的に関わる人達やファンを増やしている。雇用や住宅を整備してU・Iターンを促すのではなく、センスのある文化政策で楽しい賑わいを生み出す。自己肯定感があることが大事だと説く。


平田さんの考える新たな「この国のかたち」を語るため、随所で、司馬遼太郎「坂の上の雲」の一節を引用している。あらためて司馬史観の影響力に感心した。

東北の震災復興の章では、リーダーシップも大事だが、フォロワーシップも大事であると指摘する。これに関連して紹介された、故梅棹忠夫氏の言葉、「請われれば一差し舞える人物になれ」という人生訓にも共感した。

下り坂をそろそろと下る (講談社現代新書)

下り坂をそろそろと下る (講談社現代新書)

  • 作者: 平田 オリザ
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/04/13
  • メディア: 新書



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