焼肉ドラゴン [シネマ&演劇]
かつて演劇賞を総なめにした舞台を鄭義信監督が初めてメガホンをとり、映画化した。TOHO日比谷でさっそくみた。昭和の高度成長期、万博を前にした大阪が舞台。働けば豊かになると信じた、幸せなころの日本人を描いた「三丁目の夕日」とは対極の物語。在日の人たちの喜怒哀楽を描く。
真木よう子、井上真央、桜庭ななみの三姉妹に大泉洋がからむ。焼肉屋のホルモンくさい店内で、恋をして、けんかして、飲んで、にぎやかな日常。戦争にかり出され、敗戦を迎え、故郷を失い、日本で生きていくしかない朝鮮人。小さいころには近くにそんな地区があって、親にはあまり近づくなと言われたことを思い出した。
厳然として残る差別の実態を、それと闘い、たくましく生きる焼肉屋一家の姿を描くことで訴える。再開発で立ち退きを迫られ、最後は北へ、南へ、家族はバラバラになる。キム・サンホ演じる父親は「離れていても家族」と涙ながらにつぶやく。絆とかいう言葉ではなく、助け合って生きる人々の「血の濃さ」みたいなものを感じた。
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