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アフガニスタンの診療所から [読書日記]

医師中村哲さんの名著。同じアジアと言いながら日本からは遠い国アフガニスタン。本が書かれたのは1992年だが、なお内乱が続くアフガニスタンのことを思う。米ソの覇権争いの舞台となりながら、屈することなく戦い続けたムジャヘディン・ゲリラ。復讐、昔の日本でいう仇討ちが公認されている社会。前近代の部族社会に西欧の近代国家制度を持ち込み、ヨーロッパの価値観で全てを取り仕切ろうとしたアングレース(英米)。反感の根は深いのだ。

ペシャワール会という小さな団体が母体。欧米の大きなNGO、ミッション系のものも含めて、結局莫大なカネを使いながら難民帰還の事業を進めることができなかった。現地で住民の中に分け入り、ともに暮らしてみて初めて国の現実が分かると中村さん。一点集中主義で地道にパシュトゥンの人々を育て上げて地区に診療所を作った経緯が綴られている。

国際協力、国際貢献というものの実態、貧しく困っている人たちに何かをしてあげる、自己満足に陥っていないか。いつも感じるもやっとしたものについて、中村さんは道理を説き、静かに告発している。日本を自動販売機の国と言い、人と人が触れ合うことが少なく、何か大事なものを失ってしまっていると指摘する。後進国を発展途上国と言い換えるならば、先進国は発展過剰国とでもいうべきとの指摘に頷くしかなかった。


アフガニスタンの診療所から (ちくま文庫)

アフガニスタンの診療所から (ちくま文庫)

  • 作者: 中村 哲
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2005/02/09
  • メディア: 文庫



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