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恋するアダム [読書日記]

久しぶりに翻訳物を読む。ブッカー賞作家イアン・マキューアンの最新長編。AIを搭載した見かけも人間と違わないアンドロイドのアダムが持ち主の彼女に恋をして大騒動になる。英国の実在の著名人が登場するパラレルワールドの話として、とんでもない設定なのにリアルに描かれている。ユーモアと皮肉たっぷりなストーリーを楽しんだ。

サッチャー時代のフォークランド紛争で騒然とするロンドン、再結成したビートルズの新曲が出たり、伝説の天才数学者アラン・チューリングが重要な役回りで出てきたり。虚実とりまぜた組み立てになっているが世界の出来事やテクノロジーの歴史の雑学があった方が楽しめるかも。AIが囲碁やチェスの名人を下す話も出てきて、いつかはAIに人間は支配されてしまうのではないかという現代人の不安を背景にしている。

アダムはネット上からあらゆる知識を渉猟して知能を高度化する。しかし子どもの知能には敵わない。遊びの中でいろんなものを発見していく柔らかな脳。AIにはそれはできないのだ。わかってきたのは、人間の知能というのは1種類ではないということだ。故に万能のAIというものない。何しろ人間のことを、脳のことを、いまだによく理解していない人間が作るAIなのだから。村松潔訳。


恋するアダム (新潮クレスト・ブックス)

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  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2021/01/27
  • メディア: Kindle版



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