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つかこうへい正伝 [読書日記]

つかこうへい正伝を読了する。1968〜82年、つかが慶應大に入り劇団暫、つかこうへい事務所を立ち上げ解散するまでの記録。つかの下で薫陶を受けた長谷川康夫による青春記でもある。新たな演劇界のスターとして颯爽と世に出て、作品が映画化され、直木賞をとり、時代の寵児となる一部始終。舞台を作り上げる熱気が伝わってくる一冊だった。

VAN99ホールや紀伊國屋ホールで大好評を博しブームとなった、当時の舞台は残念ながら知らないが、つかの作品には何度か触れる機会があった。「郵便屋さんちょっと」や「熱海殺人事件」「飛龍伝」。何年か前に東京で見た舞台は、機関銃のような長台詞と挿入歌が印象に残る。演技する俳優に対し、つかがその場でセリフを足していく「口立て」という演出法で、芝居の世界が広がっていく。まず台本があるのではなく、公演中にも日々、新たなセリフやアイデアが加えられたと知り、そんな作劇方があるのかと感心した。俳優たちはさぞ大変だったろうと思うとともに、芝居の醍醐味というのもこんなところにあるのかもしれないと思った。

つかは「けれん」にこだわった芝居づくりをしたという。唐十郎や寺山修司の劇はまさに「けれん」そのものだが、彼らのようにどろどろとした情念が流れている感じではなく、つかの場合はもっとお洒落で軽いものだったと長谷川は書いている。つかが在日であることにも随所で触れているが、作家名が「いつか公平」をもじったものとの説があったと初めて知った。それにしても風間杜夫や平田満、根岸季衣、柄本明、石丸謙二郎、シティボーイズ、加藤健一、萩原流行、岡本麗ら、多くの俳優がつかの舞台から巣立った。今の演劇界の見取り図を理解するのにも役立った。




つかこうへい正伝 1968-1982 (新潮文庫)

つかこうへい正伝 1968-1982 (新潮文庫)

  • 作者: 長谷川 康夫
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/05/28
  • メディア: 文庫



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