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やさしい猫 [読書日記]

中島京子さんの「やさしい猫」を読む。以前から一度読んでおかなくてはと思っていた作家。日本で働き暮らす外国人の在留許可の問題を新聞の連載小説で取り上げた。首都圏では特に身近に外国の人たちがいるし、もう彼ら無くして日本の社会は成り立たない。それなのに入管に収容されて亡くなったり、家族と引き裂かれて強制送還されたりするケースが相次ぐ。難民受け入れも含めて、外国の人たちを受け入れる体制にこの国はなっていないと改めて感じる。

ひとり娘を育てるシングルマザーとスリランカ人の自動車整備工が出会い恋をして、家族になる。しかし会社が倒産し、オーバーステイで捕まり、入管に収容されてしまう。日本人と結婚すれば、配偶者として在留許可がもらえるとか、勝手に別の仕事に就くことができないとか、多くの制約があることを恥ずかしながら初めて知った。

欧米などと比べると、外国から人を受け入れる際の障壁が日本は随分と高い。陸の国境がない国土や、自国の労働者を守る政策が長年、異国の人々を拒んできたのだろう。しかし時代は変わった。経済で先行するグローバリズムは、社会政策にも影響を及ぼしている。コロナで人の往来が止まる事態は、一国だけではもはや何事もできないボーダーレス世界の現実をあぶり出した。文化の違いを尊重し合う社会へ、その断面を見事に描いた作品だった。


やさしい猫

やさしい猫

  • 作者: 中島京子
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2021/10/22
  • メディア: Kindle版



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