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弟 [読書日記]

先日亡くなった石原慎太郎さんの「弟」を読む。弟・石原裕次郎とタッグを組んで時代の波に乗り続けた半生を語った一冊。海、ヨット、マチスモというキーワードから立ち現れるのは、父親=父性の復権とでもいうものか。早く亡くなった父への思いは、兄弟して終生変わらなかたようだ。

「太陽の季節」で芥川賞をとり弟を映画界に売り込んだ。「狂った果実」から始まる銀幕での活躍より、「太陽に吠えろ」「西部警察」のボスで馴染みがあった裕次郎。自由気ままな行動が大衆から愛されたが、ストレスから来る不摂生で病苦を重ねた。最期の場面は読んでいても辛い。

慎太郎は文学から政治の世界へ入ったが、二人に共通するのは既存の権威に楯突くこと。政治家・石原は自ら「価値紊乱者」と称した。カッコよく打ち出した新奇な政策は注目を集めた。しかし、その一方では「三国人」発言など数々の暴言で世間を騒がせ、人を傷つけもした。既成概念を壊すことには少しは成功したかもしれないが、結局新しいものは創造できなかった。時にはブラフを使い、相手を脅して自らの意思を通そうとした。危うさばかりが心に残った。慎太郎の訃報を受けた新聞の論評には、「戦後日本の進んできた姿と重なる」とあった。


弟

  • 作者: 石原慎太郎
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2013/08/30
  • メディア: Kindle版



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