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文明の生態史観 [読書日記]

梅棹忠夫の名著、文明の生態史観を読む。生誕100年の帯がついた中公文庫。ユーラシア大陸を第一地域と第二地域に分けて、生態学の視点から国の発展のあり方を分類してみせた。温帯の日本と西ヨーロッパの類似性を指摘する論考は、昭和30年代に書かれたとは思えない。まだ自由に海外旅行など行けなかった時代ゆえに大きな反響を巻き起こしたのも頷ける。

世界の4大文明が生まれたのはいずれも乾燥地帯の周辺。大国が生まれてはそれまでの国を破壊するパターンを繰り返し、社会が安定することはなかった。文明国の辺境にあった日本と西ヨーロッパは大国に侵略されることなく、封建制を経てブルジョアを育成し、植民地を持つ列強となり、民主主義の国になった。歴史学者トインビーの名前を久しぶりに見て、そう言えば昔流行ったなあと感慨に浸った。

確かにと思ったのは、日本がアジアの一員でありながら東南アジアの国々とは全く異質な国であるということ。それは芸術、美的感覚にも現れていて、古い美術品や仏像、建築に価値を見出すのは日本特有で東南アジアにはないという。仏像は古くなれば綺麗に塗り直したりしていつもピカピカ。絵を家の中に飾るという習慣もあまりない。宗教についても生活の中に根付いているアジアの国々と、日本は全く違う。いい悪いではなく、アジアにおける日本の異質性がよく分かった。


文明の生態史観 (中公文庫)

文明の生態史観 (中公文庫)

  • 作者: 梅棹 忠夫
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 1998/01/18
  • メディア: 文庫



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