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養老先生、病院へ行く [読書日記]

かの養老孟司先生と東大病院の教え子、中川恵一さんの共著。病院嫌いの養老先生が体調が悪くて病院に行き、心筋梗塞と分かって緊急手術で一命を取り留めた話、愛猫まるの死などについて語る。医者であるのに、統計データに基づく現代医療に違和感を持ち、「身体の声を聞く」ことを大切にしてきた養老先生の考えに共感するところが大きかった。

ペットの犬や猫は、今この時のことしか考えていない。将来のことは考えない。今をただ精一杯生きることに全力だ。人間は大脳によって都市化した世界を作り、自然=死を見えないようにして暮らしている。一人称の死(自ら見えない自身の死)、二人称の死(家族や友人などの死、家族同様のペットの死)、三人称の死(テレビなどで見る戦争の犠牲者など)という定義もストンと胸に落ちた。

うちで飼っていたフレンチブルドッグ(あんず)が息をひきとった。台風の朝、眠るように亡くなっていた。14歳という高齢で半年ほど前から病気であるのが分かっていたが、手術を回避し家で家族がケアしながら見守る道を選んだ。次第に立ち上がれなくなり食も細くなったが、痛がるそぶりはなかった。最後に大好きだった散歩にもう一度連れて行ってあげたかったなあ。役に立つとか儲かることばかりが重視される社会で、ただ純粋に飼い主に懐いてくれた存在。本書でも猫ブームは、現代の人間社会の生きづらさの裏返しとの指摘があり、うなづいた。


養老先生、病院へ行く

養老先生、病院へ行く

  • 出版社/メーカー: エクスナレッジ
  • 発売日: 2021/04/08
  • メディア: 単行本



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