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海辺のカフカ [シネマ&演劇]

村上春樹のベストセラーを蜷川幸雄が演出した舞台をTBS赤坂ACTシアターで見た。水槽のようなセットがステージ上を移動し場面転換する。基本黒子が押す人力で、図書館の一室から神社、雑木林、中型トラックまでが台車にのって前面に出てくる。入り組んだ村上作品の世界をどうしたら舞台でスムーズに見せることができるか。全て人の手、アナログでやることが蜷川の答えだった。

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「海辺のカフカ」は随分前に読んで詳しい内容は忘れてしまっていたが、村上の最新長編「騎士団長殺し」を遅ればせながら文庫で読んだばかりだったので、夢と現実を行き来するような作品世界には比較的すんなりと入ることができた。小さな水槽に入った寺島しのぶ扮する佐伯さん。寺島は「蜷川さんが残した装置と対決している感じ」と語っていたが、狭い水槽でうごめく姿が印象に残る。木場勝己演じるナカタさん、世界の真実を知る男を実直に表現していた。

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2012年の初演では、田中裕子が主役だった。今回フランス公演のため、木場や古畑新之、柿澤勇人といったオリジナルメンバーに加え、寺島、岡本健一、木南晴夏らが参加したという。

公演中に千葉震源の地震があり、客席も結構揺れた。一瞬小さくどよめいたが、舞台上の役者(確か寺島と木場)は驚くこともなく演じ続けた。さすがプロだね、と称賛の声あり。

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ジャガーの眼 [シネマ&演劇]

唐組の第63回公演「ジャガーの眼」を雑司が谷の鬼子母神・紅テントで見た。1983年(昭和58)に亡くなったアングラ演劇の旗手・寺山修司へのオマージュとして、唐十郎が創作した。寺山が愛用したジーンズサンダルが巨大化して冒頭から出てきたり、劇中でも詩人・寺山の名が何度か出てくる。寺山の最後の演劇論集「臓器交換序説」にもヒントを得たといわれる。 IMG_2510.jpg 今回の公演は、内野智、月船さらら、大鶴美仁音が客演していて、いつもよりパワーアップした感じ。移植された眼球の角膜に残るかつての恋人の残像。謎の探偵社や、怪しい医者らが絡まって、大活劇を繰り広げる。 IMG_2512.jpg 雑司が谷の初日ということで、なかなかの入り。5月のこの時期の公演は暑くも寒くもなく、つくづく観劇日和で幸せな気分になる。2時間余りの公演はカタルシスを感じさせる大団円で幕。出演陣の紹介と挨拶の後、舞台の向こう、境内の暗闇に役者たちがそれぞれはけていく。やり切った感のある、この感じがたまらなくいいなあ、と思う。
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クリムト エゴン・シーレとウィーン黄金時代 [シネマ&演劇]

「クリムト エゴン・シーレとウィーン黄金時代」を試写会で見た。上野であっているクリムト展の前にお勉強と思って見たのだが、クリムトの生涯をたどる訳ではなく、むしろ19世紀末ウィーンの爛熟した空気、ハプスブルク伝統の文化を打ち破った革新的な動きを、美術だけでなく音楽や学術方面にまで視野を広げて紹介している。

性的表現については、まだ厳しかった時代に、クリムトは官能的な表情の女性を描いた。クリムトに学んだシーレは、男女の性器をそのまま描き、その作品は長い間、ポルノの範疇に括られていたという。映画で見た作品からは、人間の不安や恐れ、孤独が感じられる。少なくともワイセツな感じは受けなかった。

クリムトやシーレと同時代を生きた、フロイト、マーラー。精神分析の権威や、クラシック音楽の巨匠として、彼らの作品や業績は20世紀を超えて、現代まで生き続けている。そんなことを考えながら、次はクリムト展に行ってみようと思う。

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いつかギラギラする日 [シネマ&演劇]

深作欣二監督の特集を京橋の国立映画アーカイブでやっていたので見に行った。作品は、1992年、深作監督がプロヂューサー奥山和由と唯一組んだもので「いつかギラギラする日」。萩原健一、ショーケンが主役で、千葉真一、原田芳雄、八名信夫、木村一八といった懐かしい面々が出ている。

北海道の函館あたりのロケで、カーチェイスと撃ち合いがなかなかハンパない。ひたすらカネの争奪戦で、とにかくイケイケで製作した様子が浮かぶ。紅二点の多岐川裕美、荻野目慶子。ショーケンの彼女役の多岐川も色気があってよかったが、やはり荻野目の、はっちゃけたギャル姿でマシンガンを撃ちまくる姿が素晴らしく弾けていた。木村とのラブシーンでは、バストを披露する身体を張った演技も。

激しいアクションシーンが続く中で、だれか自分を見てほしい、本気で向き合ってほしいという、荻野目の孤独な心象風景が挿入される。銀座の雑踏で風船を持って佇む映像。娯楽アクション映画ではあるけれど、その時代の殺伐とした空気感を感じ取ることができた。
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