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東京裁判 [シネマ&演劇]

東京・京橋の国立映画アーカイブで、ドキュメンタリー「東京裁判」を見た。小林正樹監督で1983年公開のモノクロ277分を4Kデジタルリマスター版として蘇らせた。鮮明な映像で東條英機らA級戦犯の法廷での姿がスクリーンに映し出された。

極東国際軍事裁判。戦勝した連合国軍側が裁判官となること自体、公正な判断ができないのではないか。そんな考えがすぐ浮かぶが、それに加えて実際の裁判では、戦争で人を殺すことで個人の罪は問えないなど、根本的なところから弁護側が主張している。検察側ではなく弁護人に英米人が付いているのも興味深い。英米法による法廷に戸惑う日本の被告たち。連合国側の価値観で全てが運営されたのだな、と思う。

マッカーサーの意思は、昭和天皇の戦争責任を問わず、統合の象徴として日本国民をうまく統治すること。そのために軍人のみならず文官も生贄となり、絞首刑になった。米ソの冷戦構造が戦後日本の運命を決定づけた。様々な思惑が交錯し、裁判は進む。誰も戦争を止めようとせず、言われたことを実行しただけという。無責任の構図が浮かぶ。

軍事裁判とは違うが、東電幹部の裁判も。国と大企業という主語が異なるだけで、個人にどれだけ責任を問えるのかという命題に突き当たる。要は、誰かを罰しないと、大事な人を失った被害者の気持ちは収まらない。法律は最低限のモラルを条文にしたものだということを忘れないでほしい。
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春画と日本人 [シネマ&演劇]

文化記録映画「春画と日本人」の試写を見た。2015年9月に東京文京区の永青文庫であった、わが国初の春画展開催までの道のりと、それに関わった人たちの熱意を描く。英国の大英博物館で開かれた大規模な春画展は大変な反響で、日本伝統の「アート」として評価された。それが日本国内では、いまだに猥褻物扱いで、公立の美術館等では開催拒否されているという。

確かに男女の性器があからさまに描かれているのだが、ネット上などにポルノが溢れている現状において、現代人の感覚ではいやらしさの度合いはソフトだ。公序良俗に著しく反するとは思えない。江戸の庶民の楽しみとして出現し、かつては嫁入り道具の一つとして持たされた歴史もあったという。維新後の薩長政府が取り締まるまでは、性におおらかな日本社会だったのだ。時を経て春画もアートになった。無粋なことは言わず、東京国立博物館あたりで大規模展をいつか開いてほしい。

以前、福岡市美術館であった展覧会で春画コーナーが設置され、見に行ったことがあった。未成年は立ち入り禁止。レンタルビデオ店のアダルトコーナーのような建て付けで展示してあったが、公立施設の展示ということで結構な話題になった。政治的なメッセージが問題視されて一部展示が中止となったあいちトリエンナーレとは事情が違うとはいえ、税金を使った公的施設での展覧会のあり方を問うという意味では、同じではないか。芸術作品を広く公開し、多くの人の鑑賞してもらう。判断するのは見る人。多様な意見に寛容な社会でありたい。

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