会議 [シネマ&演劇]
最近ハマっている別役実戯曲。今回は1970年代に書かれた「会議」を東京・初台の新国立劇場で見た。われわれ人間に備わる「会議本能」を試す実験として街角に設置された会議室。そこに集まる人々の会話を通して戦後民主主義の実態、現代ニッポンにもありがちな会議の非生産性を描き出す。アイロニーに満ちた作品だ。
人が加わる度に話が脱線し、終いには論点がずれてしまっている。司会、議長が発言を許可し、会議を動かす権力を持つ。まあまあと議論を遮り、早く結論を出そうと焦る人、とにかく自分の主張を押し通したい人、しきりと仕切りたがる人。会議での「あるある」に頷きながら見入った。
同劇場演劇研修所の第13期生試演会。西川信廣演出。別役が仕掛けた問いは、さらに深く難解なものらしいが、不条理演劇の雰囲気を楽しむのも良いと思う。
人が加わる度に話が脱線し、終いには論点がずれてしまっている。司会、議長が発言を許可し、会議を動かす権力を持つ。まあまあと議論を遮り、早く結論を出そうと焦る人、とにかく自分の主張を押し通したい人、しきりと仕切りたがる人。会議での「あるある」に頷きながら見入った。
同劇場演劇研修所の第13期生試演会。西川信廣演出。別役が仕掛けた問いは、さらに深く難解なものらしいが、不条理演劇の雰囲気を楽しむのも良いと思う。
イエスタデイ [シネマ&演劇]
ビートルズの名曲を聴きながら、ハッピーエンドを迎える。ビートルズを聴き始めたころ、青春を思い出し、温かな気持ちになる。
主人公のシンガーソングライターが歌うオリジナル曲、本人役のエド・シーランの曲以外は、すべて知っているビートルズナンバー。だから、安心して聴けるし、見られる。この作品を支配する安心感は何だろう。もし自分が好きでたまらないものがこの世からなくなって、その記憶、それにまつわる想い出さえ失ったら。何かわからないけど、もの足りない何かが心の奥底に沈殿するのではないか。作品はビートルズ賛歌であるとともに、人の深層心理、想い出の大切さみたいなものを訴えてもいる。
ダニー・ボイル監督、リチャード・カーティス脚本。英国の映画なので、米ハリウッドのショービジネスへの皮肉もたっぷり。カネと名誉よりも、故郷で愛する女性との人生を大切にしたい。人間の幸福って結局そういうことじゃないのと。
主人公のシンガーソングライターが歌うオリジナル曲、本人役のエド・シーランの曲以外は、すべて知っているビートルズナンバー。だから、安心して聴けるし、見られる。この作品を支配する安心感は何だろう。もし自分が好きでたまらないものがこの世からなくなって、その記憶、それにまつわる想い出さえ失ったら。何かわからないけど、もの足りない何かが心の奥底に沈殿するのではないか。作品はビートルズ賛歌であるとともに、人の深層心理、想い出の大切さみたいなものを訴えてもいる。
ダニー・ボイル監督、リチャード・カーティス脚本。英国の映画なので、米ハリウッドのショービジネスへの皮肉もたっぷり。カネと名誉よりも、故郷で愛する女性との人生を大切にしたい。人間の幸福って結局そういうことじゃないのと。
この道はいつか来た道 [シネマ&演劇]
別役実作、鵜山仁演出の「この道はいつか来た道」を下北沢駅前劇場で見た。金内喜久夫と平岩紙のふたり芝居。全一幕50分、これまで見た芝居の中で最も短い上演時間だったが、濃密な言葉のやり取りで人間らしく死ぬとはどういうことなのかを考えさせられた。
ポリバケツや電柱に話しかける、滑稽な場面から始まり、ホームレスのような男女が路上にゴザを敷いて茶飲み話をする。会話の中で二人が顔見知りでホスピスから逃れてきたこと、余命が幾許も無いことなど、関係性が次第に明らかになっていく。
病を得た人の残りの人生を安らかなものにと欧米で考え出されたホスピス。でも、それって人の最期として果たしてどうなの? 痛がったり苦しんだりして死ぬ自由さえ、現代人には許されないのか。施設ではなく自宅で最期を迎えたいという気持ちとも通じる思い。自分なりにどんな最期を迎えたいのか、いつか考えなければならない時が来るだろう。
ポリバケツや電柱に話しかける、滑稽な場面から始まり、ホームレスのような男女が路上にゴザを敷いて茶飲み話をする。会話の中で二人が顔見知りでホスピスから逃れてきたこと、余命が幾許も無いことなど、関係性が次第に明らかになっていく。
病を得た人の残りの人生を安らかなものにと欧米で考え出されたホスピス。でも、それって人の最期として果たしてどうなの? 痛がったり苦しんだりして死ぬ自由さえ、現代人には許されないのか。施設ではなく自宅で最期を迎えたいという気持ちとも通じる思い。自分なりにどんな最期を迎えたいのか、いつか考えなければならない時が来るだろう。
大倉集古館リニューアル [アート]
東京・虎ノ門の大倉集古館に行ってきた。ホテルオークラの改築工事に伴い、地下収蔵庫の増築など行い、9月にリニューアルオープンした。大倉喜八郎によって1917(大正6年)に設立されたわが国初の私立美術館。中国の古典様式を生かした建物で、超近代的なホテルのビル群と対照的な趣ある佇まいを見せている。
収蔵物は日清、日露戦争で莫大な富を得た喜八郎が、仏像や美術品の海外流出を防ごうと蒐集を始めたのがきっかけ。蒐集はその後、アジア一帯に広がり、貴重なコレクションが生まれることになったという。
管内では再オープン記念の特別展「桃源郷展〜蕪村、呉春が夢みたもの」が開かれていたが、横山大観の「夜桜」など珠玉の収蔵品が並ぶ常設展がなかなか見ごたえがあった。
前庭やエントランス、階段の手すりにも楽しい彫刻があったりして、のんびりできる都心の憩いの場になりそう。
人間失格 太宰治と3人の女たち [シネマ&演劇]
太宰治の遺作「人間失格」の誕生秘話をもとにした作品。ネクラな作家と忌避していた太宰も歳を重ねると、その作品の意味が分かったりして、近年ちょっとしたマイブーム。ヤバ過ぎる作家の生態といった惹句もあってか、新宿ピカデリーでは若いカップルの客が多かった。
蜷川実花監督の作品は、映像の美しさ、特に赤い色が印象に残っているのだが、今回は血の色。結核を病んだ太宰の咳と吐血がこれでもかと映し出され、見ていて息苦しくなる。妻と愛人、夫婦愛と恋愛、家族と創作。流行作家と持て囃される太宰の葛藤、まさに身を削り血を吐きながら書き続ける、鬼気迫る姿を血の色で表現したのだろう。
坂口安吾、檀一雄が出てきて、デカダンな香りを醸し出す。志賀直哉、川端康成も同時代に生きていたのか。三島由紀夫が出てきて太宰を批判するくだりにはびっくり、この場面は実話なのだろうか。日本文学史の知識が少しあると楽しく見られる。あと、スカパラのエンディング曲がいいネ。
蜷川実花監督の作品は、映像の美しさ、特に赤い色が印象に残っているのだが、今回は血の色。結核を病んだ太宰の咳と吐血がこれでもかと映し出され、見ていて息苦しくなる。妻と愛人、夫婦愛と恋愛、家族と創作。流行作家と持て囃される太宰の葛藤、まさに身を削り血を吐きながら書き続ける、鬼気迫る姿を血の色で表現したのだろう。
坂口安吾、檀一雄が出てきて、デカダンな香りを醸し出す。志賀直哉、川端康成も同時代に生きていたのか。三島由紀夫が出てきて太宰を批判するくだりにはびっくり、この場面は実話なのだろうか。日本文学史の知識が少しあると楽しく見られる。あと、スカパラのエンディング曲がいいネ。
バスキア展 メイド・イン・ジャパン [アート]
バスキア展を六本木の森アートセンターギャラリーで見た。ニューヨークの路上の落書きが、ウオーホールとの出会いを機にストリートアートとして認められていく。わずか27年の生涯、描き続けた情熱を間近に見た。
バブルの頃に来日し、感じたことを作品にしていて、それらの展示が今回の目玉。作品には文字が多く書かれ、社会を風刺したメッセージになっていたりするらしい。日本では雑誌ブルータスがいち早く特集し、アートに限らずファッションでもバスキアブームを巻き起こしたという。
zozoの前澤氏が高額で落札し話題になった青いガイコツの絵も展示されていた。観覧料は2100円と通常の展覧会より高い。その代わり全員に解説のレコーダーが貸与されて、吉岡里帆の声を聴きながら作品の意味を理解する趣向です。
記憶にございません [シネマ&演劇]
久しぶりに三谷幸喜監督のコメディーを日比谷でみた。主演は中井貴一。テレビの雲霧仁左衛門、なかなか渋くていい味出してるなあ、と思っていたが、コメディーはやはりうまいですね。役者としての円熟味みたいなものが出てきたのではないかと思う。
作品は、タイトルからして現代の政治を皮肉ったもの。「大きくなったら総理大臣になる」と昔の子どもたちはよく言ったものだが、今はそんなことを言う子は小学校のクラスで一人も居まい。頭にあるのは自分の出世や選挙のことばかり、カネに汚く、政策の勉強もろくにしない。国の将来や国民のことを考えている政治家は果たしてどのくらいいるだろう。そんな政治状況を変えてくれるヒーローはでないものか。国民の期待や願望がこの映画を生んだのだと感じた。
不倫があったり、反社会勢力との繋がりが疑われたり、ワイロまがいの政治資金があったり。さもありそうな話が首相官邸を舞台に描かれる。ピリリと風刺のきいたコメディー、さらにロングランヒットしてほしい。
作品は、タイトルからして現代の政治を皮肉ったもの。「大きくなったら総理大臣になる」と昔の子どもたちはよく言ったものだが、今はそんなことを言う子は小学校のクラスで一人も居まい。頭にあるのは自分の出世や選挙のことばかり、カネに汚く、政策の勉強もろくにしない。国の将来や国民のことを考えている政治家は果たしてどのくらいいるだろう。そんな政治状況を変えてくれるヒーローはでないものか。国民の期待や願望がこの映画を生んだのだと感じた。
不倫があったり、反社会勢力との繋がりが疑われたり、ワイロまがいの政治資金があったり。さもありそうな話が首相官邸を舞台に描かれる。ピリリと風刺のきいたコメディー、さらにロングランヒットしてほしい。