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怪物 [シネマ&演劇]

脚本の坂元裕二がカンヌで賞を受けた「怪物」(是枝裕和監督)を見る。子どものいじめの話かと思っていたら、モンスターペアレントの話になり、さらに物語が展開していく。「かいぶつだあれだ」という子どもの遊びのかけ声が見る者への深い問いかけとなっているのに気づく。

担任の先生役の瑛太と、恋人役の高畑充希のいかにも楽しげなじゃれあい。深刻な事態の中での軽いノリ、学校の先生の「いま」を表すプライベートな描写がいい。校長役の田中裕子。暗い雰囲気は学校側にありがちな保身を象徴していて、不気味だった。

格差社会、母子家庭、家庭内暴力、教育現場の過酷労働、性的マイノリティー。いろんな問題が絡み合う社会において、「怪物」のような子どもたちを生み出しているのは、周りを取り巻く親であり、学校や先生であり、無関心を装う隣人、あなたではないのか。そんな鋭いメッセージを突きつけられた映画だった。
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シン・仮面ライダー [シネマ&演劇]

庵野秀明監督の「シン・仮面ライダー」を見た。ウルトラマン世代で仮面ライダー世代ではないが、安野監督の一連の「シン」シリーズということでチェックした。

ヒロイン緑川ルリ子の浜辺美波が抜群にいい。美少女からクールな女性へ。芯が強くて優しくて、生活感のない役柄にはピッタリはまる。昭和のスターの香りがする俳優だと思う。

悪の秘密結社「ショッカー」は、Sastainable Happiness Organization with Computational Knowledge Embedded Remodelingの略で通称「SHOCKER」なんだとか。ネットによると、「計量的な知能の埋め込み改造により持続可能な幸福を目指す組織」と訳されるらしい。単に世界征服をするといいうのではなく、独特の幸福への原理を掲げてそれを昆虫型の改造人間を使い実現しようとする。サステナブルという言葉で令和の仮面ライダーの味付けをしたのだろう。

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すずめの戸締まり [シネマ&演劇]

3・11に新海誠監督の「すずめの戸締まり」を見た。家族が不在で、たまには映画でも見るかとチケットを予約した日が3・11だった。その日だけ上映回が増えているのに後で気づいて、東日本大震災から12年の日だと思い出した。

地震の話で3・11の被災者にはストーリに複雑な思いがあると聞いていた。南海トラフの宮崎南部から四国、神戸、東京、そして東北と、物語は地震列島を北上していく。地震を起こす地底の力を表すミミズが青空に伸びていく異様な景色は恐ろしく不気味だった。かつて住んでいた東京の住居付近であるお茶の水の地下鉄丸の内線が地上に顔を出すトンネルの出口。そこからミミズが出てきて東京の空にトグロを巻く。要石から解放されたネコのダイジンが「100万人が死ぬよ」と可愛い声で囁く。恐ろしい言葉に鳥肌が立った。

要石にされた閉じ師の若者をすずめが助け出すのは予定調和のストーリーだが、母を失った幼いすずめを育てた叔母たまきとの関係、姉の娘の子育てで青春を奪われた体験は、多くの犠牲者を出した被災地ではよくある話で、同じ思いをしている人があるんだろうなと胸に刺さった。そして涙が止まらなかった。自分が被災者だったら3・11にこの映画は見たくないと思った。
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百花 [シネマ&演劇]

川村元気が原作、脚本、監督の「百花」を見た。認知症で記憶を失っていく母と息子の物語。人の忘却、忘れるということについて考えを巡らす。AI、人工知能があらゆることを記録してくれる時代だからこそ、人間ならではの記憶の特殊性、感情が介入する思い出の大切さを思う。

認知症の母が覚えている景色、息子が忘れていた思い出。キーワードは、母親がもう一度見たいと息子にせがむ「半分の花火」。半分の花火って、どんなんやろか? スクリーンで見て、半分の花火の景色を見て(ここで一気に伏線を回収)、「なるほど」と頷き、ついほろりとした。

原田美枝子、菅田将暉、長澤まさみ、永瀬正敏という主要キャスト。年を感じさせない原田の色気に感心する場面もあった。永瀬は「オリバーな犬」でも久しぶりに見たが、自分としては随分久しぶり。年をとってなかなか渋くなった。


百花 (文春文庫)

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  • 作者: 川村 元気
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2021/07/07
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コンビニエンス・ストーリー [シネマ&演劇]

久々のシネマ鑑賞は、空いていたコンビニエンスストーリー。世にも奇妙なタッチら
しいとは聞いていたが、生と死の世界が地続きになっているお話で、山の中のコンビ
ニがとても印象的だった。

成田凌と前田敦子、六角精児という主要キャスト。脚本家の主人公が犬の缶詰を買い
に深夜のコンビニに立ち寄り、異世界に迷い込む。怪しい役ははまり役の六角さん、
森の中の演奏会で振るタクトが堂にいっていて、そのシーンが目に焼きついた。

監督・脚本の三木聡は、放送作家としてタモリ倶楽部やトリビアの泉を手がけていた
という。そのセンスは素晴らしい。たまたま観た映画でそんな事実を知る。映画のセ
レンディピティ、気付き、出会いが楽しい。


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シン・ウルトラマン [シネマ&演劇]

庵野秀明が総監修の「シン・ウルトラマン」を見てきた。シン・ゴジラに続く「シン」シリーズ。新だけではなく、真であり、深であり、神でもある「シン」なのか。昭和のウルトラマンとは一味違うオトナの味付けをしたウルトラマンだった。

怪獣は「禍威獣」とされ外星人が持ち込んだ生物兵器とされる。ウルトラマンの故郷、光の星もい含め地球外の進化した生命体が地球=人類を我がものにしようと企んでいる中で、掟を破り人類と融合したウルトラマンが人類を守るため奮闘する。

デジタル技術の進歩で特撮映画と思えぬリアルな映像。巨大化した長澤まさみにはびっくりしたけれど(映画を見た、ららポート福岡のガンダム像を見た後だったので)。結局、人類そのものが究極の生物兵器であり、地球の脅威であるというオチがついている。自らの都合で環境を破壊し続ける地球人への痛烈なメッセージであるのは言うまでもないだろう。

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ひまわり [シネマ&演劇]

ウクライナを舞台にした「ひまわり」を見る。ロシアのウクライナ侵攻を機に全国で上映会があっているが、アマゾンプライムなら100円。確か子供の頃にテレビの洋画劇場で見たような気がしていたが、すっかり忘れていた。ソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニ主演、アントニオ・デシーカ監督作。

第2次世界大戦でロシア戦線に送り込まれた男。極寒の地で凍死寸前を地元の娘に助けられそのまま一緒に暮らす。残された妻は生死も分からぬままただ男の帰りを待ち続ける。スターリンが死去し時代が変わって、妻は意を決してロシアに夫探しの旅へ。そこで辿り着いたのは、見知らぬ女と家庭を築いた夫だった。

映画ではウクライナはソ連の一地方として描かれる。ロシアと思っていたものがウクライナの文化だったりすることを今回の戦争で知った。ウクライナは小麦やひまわり油(日本ではチョコレート製造に欠かせないらしい)の一大産地であることも知った。どこまでも続くひまわり畑に切ないメロディーが流れる。多くの兵士たちを埋葬した十字架が映し出され、麦畑やひまわり畑の下にはロシア人やイタリア人が眠っているという。死に別れ、生き別れ。愛する人との間を引き裂く戦争の残酷さは昔から変わらない。


ひまわり HDニューマスター版 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: エスピーオー
  • 発売日: 2009/12/02
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ドライブ・マイカー [シネマ&演劇]

アカデミー賞候補の作品を遅ればせながら見に行った。村上春樹の原作をもとに濱口竜介監督がイメージを膨らませた。ベケットの不条理劇「ゴドーを待ちながら」、チェーホフの4大劇の一つ「ワーニャ叔父さん」の劇中劇が映画のテーマを暗示する。

俳優役の西島秀俊と岡田将生は知っていたが、妻の音役の霧島れいか、ドライバー役の三浦透子は初めて知った。霧島はモデルだけあってホント美人さんで醸し出す色気がたまらない。三浦は「天気の子」のテーマを歌ったシンガーだと後から知ったが、無表情なドライバー役が印象に残った。

ワーニャ叔父さんの舞台には日本と韓国、中国の人たちが出演し、手話のセリフもあった。多言語という場を作り、この作品のテーマの一つであるコミュニケーションの困難さと大切さを表したのだろう。夫婦であっても、親子であっても、ちゃんと向き合って話をすることは意外とない。家族という関係ゆえにお互いを気遣い、遠慮が生まれるのか。チェーホフは劇の中で、失意と絶望に陥りながら自殺もならず、悲劇は死ぬことではなく生きることにあると主張する。それでも人は生きる。人生の無意味、目的や意義のなさを知りながらこの不条理な世界を生きていくのだ。

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ダ・ヴィンチは誰に微笑む [シネマ&演劇]

ダ・ヴィンチ最後の傑作といわれる絵画「サルバトール・ムンディ」、通称「男性版モナ・リザ」をめぐるノンフィクション。13万円でニューヨークの画商が手に入れた1枚の絵がオークションで510億円で落札される。現代アート市場の実態とからくり、その背景を追っている。

「ダ・ヴィンチが描いた救世主」という、絵画のテーマ自体がキリスト教世界の人々にとって特別な存在らしい。ディカプリオはじめ公開された絵を見た人たちが涙を流す様を見て、そう思った。モナ・リザを見て日本人が涙を流すだろうか。これがあの有名なモナ・リザかと、ルーブルで見た時に感動した思い出はあるけれど、絵自体に感動したというよりルーブルに今いる自分に感動していたような気がする。文化の違いを思う。アントワーヌ・ヴィトキーヌ監督。

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キノシネマ天神で見た。初めて訪れたが、新たにこういうミニシアターができたのは大歓迎。ネットでいろいろな作品が手軽に見れる時代だが、やはりスクリーンが一番だと、改めて思った。


レオナルド・ダ・ヴィンチ ミラノ宮廷のエンターテイナー (集英社新書)

レオナルド・ダ・ヴィンチ ミラノ宮廷のエンターテイナー (集英社新書)

  • 作者: 斎藤泰弘
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  • 発売日: 2020/01/17
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ムサシ [シネマ&演劇]

井上ひさし作、蜷川幸雄オリジナル演出の「ムサシ」を北九州市芸術劇場で見た。蜷川の7周忌追善公演。あれからもう7年か。蜷川ファンとして、喜劇も見ておかねばと小倉まで足を伸ばした。

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リバーウオークに来たのは初めて。奇抜な建物で面白いが、雨が振り込んだりするし、冬よりは夏向けの建築物かもしれない。劇場は6階。コロナも収まり客席はほぼ満員。季節もいいしみんな少しは羽を伸ばしてもいいよね、という感じなのかも。当方も観劇は1年8カ月ぶりで、まさに感激である。

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吉川英治「宮本武蔵」を元にしたとはいえ、海外で「禅コメディ」と呼ばれ好評を博したという。お寺で武蔵(藤原竜也)と小次郎(溝端順平)が果たし合いまでの時間を共に過ごすという設定で、住職や柳生の頭領や地元の娘らが絡む。吉田鋼太郎、白石加代子、鈴木杏といった芸達者が揃う。随所で笑いをとりながら、ゾクっとするどんでん返しが待っていた。いやあ、やっぱり生の舞台はいいよなあ。蜷川さんの遺影と一緒に並んだ出演陣のカーテンコールに客席はステンディングオベーションで応えた。うるっと来ました。

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