「特別展 縄文~1万年の美の鼓動」を上野の東京国立博物館でみてきた。酷暑の中、人出が少ないのを狙って午前中に行ったが、皆同じことを考えるらしく、それなりの混雑。涼しい館内で、お目当ての土偶と縄文土器をたっぷり鑑賞した。


火焔型土器、縄文の女神、遮光器土偶、縄文のビーナス。これだけそろって見る機会はない。岡本太郎によって再評価された縄文の美。縄文土器のあのデザインは同時代の世界を見回しても異彩を放つ。1万点も出土していながら、いまだ謎が残る土偶は実に多彩な造形であることが分かった。


土器にしろ土偶にしろ、単なる実用品を超えて、子孫繁栄や生活の豊かさを願い、宗教的な役割を担うアイテムだったのだろう。現代人が眺めて、そのデザイン性に惹かれ、面白く思うのはやはり、その根源にある素朴な願いに共通する思いを感じ取るからだろうか。ノーベル賞作家の川端康成は土偶をそばに置いて愛でていたという。日本列島に住んだ祖先の精神性を強く意識する展覧会であった。


平成館の前庭には森鴎外の肖像プレートが。かつてこの場所に館長としていたらしい。