リアル(写実)のゆくえ [アート]
久留米市美術館の「リアル(写実)のゆくえ」展を見に行く。「現代の作家たち 生きること、写すこと」というサブタイトルがつく。以前、超写実の絵画を集めた千葉のホキ美術館に行ったが、写実ということに昔からなぜか惹かれる。
今展は絵画だけでなく彫刻や金属による自在など多様な手法の写実作品が一堂に集められた。もともと絵画はそこにある人や物を人の手によって記録することから始まったのだろう。そういう意味で写実は原点であり、人の欲求の根本にあるものではないか。近代になって写真やコピー機が発明されても絵画や彫刻などで写し取る行為は続く。
樹脂の水槽に泳ぐ金魚(深堀隆介)、鉄自在イグアナ(本郷真也)、静物シリーズ(秋山泉)、義手シリーズ(佐藤洋二)など現代作家の作品が印象に残る。樹木を描いた作家が語っていたのは、刻々と変わる樹木の姿を見ながら写実をする。一瞬ではなく、時間をかけて人の目を通して感じたものが写し取られる。デジタル写真とは違う、作家の思いが作品には宿る。その魅力が見る者に訴えかけるのではないかと思った。
今展は絵画だけでなく彫刻や金属による自在など多様な手法の写実作品が一堂に集められた。もともと絵画はそこにある人や物を人の手によって記録することから始まったのだろう。そういう意味で写実は原点であり、人の欲求の根本にあるものではないか。近代になって写真やコピー機が発明されても絵画や彫刻などで写し取る行為は続く。
樹脂の水槽に泳ぐ金魚(深堀隆介)、鉄自在イグアナ(本郷真也)、静物シリーズ(秋山泉)、義手シリーズ(佐藤洋二)など現代作家の作品が印象に残る。樹木を描いた作家が語っていたのは、刻々と変わる樹木の姿を見ながら写実をする。一瞬ではなく、時間をかけて人の目を通して感じたものが写し取られる。デジタル写真とは違う、作家の思いが作品には宿る。その魅力が見る者に訴えかけるのではないかと思った。

杉浦非水展 [アート]
日本のモダンデザインのパイオニア杉浦非水の展覧会を福岡県立美術館で見た。三越やカルピスのポスター、商品パンフレット、さまざまな本の装丁など、いわゆるレトロモダンな図案を面白く眺めた。
戦争の時代にも重なり京城に日本の百貨店が進出したり、南満州鉄道の開通の際のポスターに関わったりしている。浅草から銀座に地下鉄が開通した時の惹句は「東洋で初めての地下鉄開通」。誇らしげな時代の空気を感じる。
デザイン界の巨匠になってからは図案集を出したり、多摩美大の設立などに関わったり、後進の教育に力を注いだようだ。会場の県美は随分久しぶり。周辺の公園はリニューアル工事中だが、確か県美は福岡市美のある大濠に移転する構想があったっけ。天神の繁華街から歩いて行ける美術館は気に入っていたのだが。

戦争の時代にも重なり京城に日本の百貨店が進出したり、南満州鉄道の開通の際のポスターに関わったりしている。浅草から銀座に地下鉄が開通した時の惹句は「東洋で初めての地下鉄開通」。誇らしげな時代の空気を感じる。
デザイン界の巨匠になってからは図案集を出したり、多摩美大の設立などに関わったり、後進の教育に力を注いだようだ。会場の県美は随分久しぶり。周辺の公園はリニューアル工事中だが、確か県美は福岡市美のある大濠に移転する構想があったっけ。天神の繁華街から歩いて行ける美術館は気に入っていたのだが。

天神イムズ 最後の展覧会 [アート]
福岡市天神のイムズが8月末で閉じる。モノを売るだけでなく情報を発信するというコンセプトが新しかった黄金のビル。演劇やコンサートなどのステージは行く機会がなかったが、8階の三菱地所アルティアムである展覧会には何度も足を運んだ。
現代アートをいち早く紹介し続けた。最後を飾ったのは、この場所で作品展をやった作家たちのコラボ展。鹿児島睦、塩田千春、山内光枝らが出品した。詩人の最果タヒも参加。「絶望を覆すことができない恋を正義とせよ、きみが、死んでも残る花。」というフレーズがそのままラスト展覧会のタイトルになっている。

ビルの黄金タイルは有田焼と初めて知った。かつては本屋があったし、自動車のショールームもあったなあ。レストラン街では、明るいうちからジョッキを傾けたこともあった。閉館を前に久しぶりに各階を巡ってみたが、すでに閉店しているところもあり、一抹の寂しさが漂う。吹き抜けの空間には「さよなら」の垂れ幕が。天神ビッグバンと銘打って進む再開発、また一つ思い出の場所が消えた。
現代アートをいち早く紹介し続けた。最後を飾ったのは、この場所で作品展をやった作家たちのコラボ展。鹿児島睦、塩田千春、山内光枝らが出品した。詩人の最果タヒも参加。「絶望を覆すことができない恋を正義とせよ、きみが、死んでも残る花。」というフレーズがそのままラスト展覧会のタイトルになっている。
ビルの黄金タイルは有田焼と初めて知った。かつては本屋があったし、自動車のショールームもあったなあ。レストラン街では、明るいうちからジョッキを傾けたこともあった。閉館を前に久しぶりに各階を巡ってみたが、すでに閉店しているところもあり、一抹の寂しさが漂う。吹き抜けの空間には「さよなら」の垂れ幕が。天神ビッグバンと銘打って進む再開発、また一つ思い出の場所が消えた。
高島野十郎展 [アート]
生誕130年記念「高島野十郎展」を久留米市美術館に見に行った。久留米出身でひとり風景画を中心に描き続けた。世界を全国を旅してなんでもない景色に美しさを見出した。晩年の蝋燭の連作は胸に迫るものがあった。

東京では北青山に住み、千葉の柏市に移ったという。若い頃はパリに住み欧州各地をスケッチ旅行している。帰国してからは、一時地元に戻り筑後の山河を描いた。赤いカラスウリが印象に残った。

そろそろ絵を再開しようと思っていたので、高島の自由なスケッチ旅行には憧れる。誰でも彼でもスマホで写真を撮る時代だからこそ、アナログで自らの目と手で描いてみたいと思う。最後は光と闇の深さを探求した高島の精神に敬意を表して記念の絵葉書を求めた。
東京では北青山に住み、千葉の柏市に移ったという。若い頃はパリに住み欧州各地をスケッチ旅行している。帰国してからは、一時地元に戻り筑後の山河を描いた。赤いカラスウリが印象に残った。
そろそろ絵を再開しようと思っていたので、高島の自由なスケッチ旅行には憧れる。誰でも彼でもスマホで写真を撮る時代だからこそ、アナログで自らの目と手で描いてみたいと思う。最後は光と闇の深さを探求した高島の精神に敬意を表して記念の絵葉書を求めた。
鴨居玲展 静止した刻 [アート]
没後35年、5年ごとに開催されているという鴨居玲展を見に久留米市美術館に足を運んだ。金沢出身、鴨居羊子の弟だとは知らなかったが、暗い独特の人物画は(どこで見たのか忘れたが)印象に残っていた。
スペインに長いこと暮らし、廃兵や酔っ払った男を描き続けた。自画像の画家とも言われ、自らをピエロにしたり酔っ払いにしたり。日本に帰り新たなテーマを見つけきれずに50代で急逝した。
酒好きだったらしい。男前できっといい奴だったんだろうなあ。一緒に酒を飲んでみたかった。飲んでは管を巻いていたんだろうなあ。芯から絵描きだったんだろうなあ。絵と共に飾られた写真を見ながら思う。酔っぱらったおじさんの絵ハガキを1枚、鑑賞の思い出に買う。1月以来の美術展、何か心にしみた。
スペインに長いこと暮らし、廃兵や酔っ払った男を描き続けた。自画像の画家とも言われ、自らをピエロにしたり酔っ払いにしたり。日本に帰り新たなテーマを見つけきれずに50代で急逝した。
酒好きだったらしい。男前できっといい奴だったんだろうなあ。一緒に酒を飲んでみたかった。飲んでは管を巻いていたんだろうなあ。芯から絵描きだったんだろうなあ。絵と共に飾られた写真を見ながら思う。酔っぱらったおじさんの絵ハガキを1枚、鑑賞の思い出に買う。1月以来の美術展、何か心にしみた。

アーティゾン美術館 [アート]

東京・京橋の石橋美術館が建て直されて、アーティゾン美術館としてオープンしたので、初日に早速行ってきた。開館記念展は「見えてくる光景 コレクションの現在地」と題して、ブリジストン創設者の石橋正二郎氏コレクションを中核とした所蔵品が美術史のテーマに沿って展示されている。

6階建ての4〜6階が展示フロア。事前予約制でQRコードが入場チケット。作品説明はスマホにアプリをダウンロードして聴く仕組みだが、イヤホンを持ってきてなくて聞けなかった(残念)。これからできる新しい美術館は、どこもこんな風なシステムになるんだろうか。


作品は特に断りがない限り、写真撮影OK。ブリジストン発祥の地、福岡・久留米ゆかりの青木繁の「海の幸」を記念にパチリ。ルノワール作の有名な少女は、「すわるジョルジェット・シャンパルティエ嬢」という題だったのか。記念にハガキを買って帰りました。


彫刻の森美術館 [アート]
予定がドタキャンになってポッカリ空いた三連休。久しぶりに秋晴れなので箱根へ遠出、彫刻の森美術館に足を運んだ。

せっかくなので、新宿から小田急ロマンスカーに乗車。広い車窓、快適な乗り心地。1時間ちょっとで箱根湯本に着いた。ここから登山鉄道で行くところだが、先日の台風で強羅まで列車は不通。代替バスでえっちらオッチラ小一時間で美術館着。

フジサンケイグループの施設だったのね。入場料1600円。エスカレーターで降りると、屋外彫刻の野っ原へ。ちょうど無料ガイドツアーが始まると言うので、30分ほど解説を聞く。

ロダン、ヘンリー・ムーア、ブールデル。世界的なアーティストの有名作品がドーンとある。ブロンズの像は鋳型に入れて作るので、同じ像が世界各地にあるそうで、どれもコピーではなく本物なんだとか。

イタリア作家の男の一生、重い荷物を背負っていく姿に共感したね。空に舞う像もなかなかフォトジェニック。カラフルなでっかい女の像も迫力だった。

せっかくなので、新宿から小田急ロマンスカーに乗車。広い車窓、快適な乗り心地。1時間ちょっとで箱根湯本に着いた。ここから登山鉄道で行くところだが、先日の台風で強羅まで列車は不通。代替バスでえっちらオッチラ小一時間で美術館着。

フジサンケイグループの施設だったのね。入場料1600円。エスカレーターで降りると、屋外彫刻の野っ原へ。ちょうど無料ガイドツアーが始まると言うので、30分ほど解説を聞く。

ロダン、ヘンリー・ムーア、ブールデル。世界的なアーティストの有名作品がドーンとある。ブロンズの像は鋳型に入れて作るので、同じ像が世界各地にあるそうで、どれもコピーではなく本物なんだとか。

イタリア作家の男の一生、重い荷物を背負っていく姿に共感したね。空に舞う像もなかなかフォトジェニック。カラフルなでっかい女の像も迫力だった。

大倉集古館リニューアル [アート]

東京・虎ノ門の大倉集古館に行ってきた。ホテルオークラの改築工事に伴い、地下収蔵庫の増築など行い、9月にリニューアルオープンした。大倉喜八郎によって1917(大正6年)に設立されたわが国初の私立美術館。中国の古典様式を生かした建物で、超近代的なホテルのビル群と対照的な趣ある佇まいを見せている。

収蔵物は日清、日露戦争で莫大な富を得た喜八郎が、仏像や美術品の海外流出を防ごうと蒐集を始めたのがきっかけ。蒐集はその後、アジア一帯に広がり、貴重なコレクションが生まれることになったという。

管内では再オープン記念の特別展「桃源郷展〜蕪村、呉春が夢みたもの」が開かれていたが、横山大観の「夜桜」など珠玉の収蔵品が並ぶ常設展がなかなか見ごたえがあった。

前庭やエントランス、階段の手すりにも楽しい彫刻があったりして、のんびりできる都心の憩いの場になりそう。
バスキア展 メイド・イン・ジャパン [アート]

バスキア展を六本木の森アートセンターギャラリーで見た。ニューヨークの路上の落書きが、ウオーホールとの出会いを機にストリートアートとして認められていく。わずか27年の生涯、描き続けた情熱を間近に見た。

バブルの頃に来日し、感じたことを作品にしていて、それらの展示が今回の目玉。作品には文字が多く書かれ、社会を風刺したメッセージになっていたりするらしい。日本では雑誌ブルータスがいち早く特集し、アートに限らずファッションでもバスキアブームを巻き起こしたという。

zozoの前澤氏が高額で落札し話題になった青いガイコツの絵も展示されていた。観覧料は2100円と通常の展覧会より高い。その代わり全員に解説のレコーダーが貸与されて、吉岡里帆の声を聴きながら作品の意味を理解する趣向です。

瀬戸内国際芸術祭に行ってきました [アート]
瀬戸内国際芸術祭に行ってきた。トリエンナーレで2010年いらい4回目。瀬戸内の島々を舞台に春、夏、秋期で、世界のアーチストが屋外や古民家を利用した作品を展示する。

今年からはオフィシャルツアーが始まり、日程が限られていたし、土地勘がないことや移動手段のことも考えて、これこれと思って申し込んだ。

豊島、犬島コースは35人の申し込みがあり、高松港からチャーター船で40分ほどで豊島へ。ツアーガイドさんの説明で、かつて豊島を揺るがした産廃騒動を思い出した。穏やかな瀬戸内の海、有人だけでも300の島があるというが、わざわざこんな所に産廃を運んできて処理するなんて。業者は儲かりさえすれば環境もへったくれもなかった時代だったのだろう。この騒ぎをきっかけにいくつかの産廃処理基準など法規制が進んだが、地域の疲弊は残った。芸術祭はそんな地域に元気を取り戻す目的で、ベネッセの福武さんの肝いり、北川フラムさんのプロデュースで始まったという。

ツアーは青、黄色チームでマイクロバスに分乗。最初に訪れたのは、家浦港近くの豊島横尾館。稀代のアーティスト横尾忠則と建築家・永山祐子によるインスタレーションハウス。古民家を改造し母屋と蔵と納屋に、「生と死」をテーマにした絵画などが展開されている。海風に耐える焦がした板塀に真っ赤なステンドグラス。男性器や羊水をイメージした形状の塔や庭、ケバケバしい色彩が目に突き刺さるようなインパクトを与える。路地の先にいきなり出現したアートハウス、時が止まったような島の集落に馴染んでいるから不思議だ。

豊島で一番人気の島キッチンの弁当がお昼ご飯。瀬戸内鮮魚のフリットにベトナムソース、島野菜の天ぷらにまぜご飯など。ワッパに入っていて見た目から美味しそう。味がしっかりしていて、あっという間に完食でした。

豊島美術館は雫の形がモチーフで棚田の斜面に白い佇まいを見せていた。ツアーでは外から見るだけだったが、コンコンと湧き出る水が唯一の展示物という哲学的な空間に一度行ってみたい。


いくつかの野外展示を見た後、船で犬島へ。この島はかつて島全体が採石場で、その後銅精錬の工場ができたが、銅価格の暴落で操業をやめてしまい廃墟に。近年は近代産業化遺産として一部が美術館となり、廃墟マニアの聖地となっている。

家プロジェクトと題して、古民家を展示場として活用した作品をいくつか見学。脳内の景色、南国の花など、スケールの大きな作品が面白かった。
犬島精錬所美術館は、自然の光や風を生かした三分一博志の建築が画期的だった。坑道をイメージしたつくりと鏡のマジックで強いインパクトを受けた。日本の近代化に警鐘を鳴らした作家、三島由紀夫のアートワークも展示されていたが、ここで三島が出てくるとは思わなかった。

今年からはオフィシャルツアーが始まり、日程が限られていたし、土地勘がないことや移動手段のことも考えて、これこれと思って申し込んだ。

豊島、犬島コースは35人の申し込みがあり、高松港からチャーター船で40分ほどで豊島へ。ツアーガイドさんの説明で、かつて豊島を揺るがした産廃騒動を思い出した。穏やかな瀬戸内の海、有人だけでも300の島があるというが、わざわざこんな所に産廃を運んできて処理するなんて。業者は儲かりさえすれば環境もへったくれもなかった時代だったのだろう。この騒ぎをきっかけにいくつかの産廃処理基準など法規制が進んだが、地域の疲弊は残った。芸術祭はそんな地域に元気を取り戻す目的で、ベネッセの福武さんの肝いり、北川フラムさんのプロデュースで始まったという。

ツアーは青、黄色チームでマイクロバスに分乗。最初に訪れたのは、家浦港近くの豊島横尾館。稀代のアーティスト横尾忠則と建築家・永山祐子によるインスタレーションハウス。古民家を改造し母屋と蔵と納屋に、「生と死」をテーマにした絵画などが展開されている。海風に耐える焦がした板塀に真っ赤なステンドグラス。男性器や羊水をイメージした形状の塔や庭、ケバケバしい色彩が目に突き刺さるようなインパクトを与える。路地の先にいきなり出現したアートハウス、時が止まったような島の集落に馴染んでいるから不思議だ。

豊島で一番人気の島キッチンの弁当がお昼ご飯。瀬戸内鮮魚のフリットにベトナムソース、島野菜の天ぷらにまぜご飯など。ワッパに入っていて見た目から美味しそう。味がしっかりしていて、あっという間に完食でした。

豊島美術館は雫の形がモチーフで棚田の斜面に白い佇まいを見せていた。ツアーでは外から見るだけだったが、コンコンと湧き出る水が唯一の展示物という哲学的な空間に一度行ってみたい。


いくつかの野外展示を見た後、船で犬島へ。この島はかつて島全体が採石場で、その後銅精錬の工場ができたが、銅価格の暴落で操業をやめてしまい廃墟に。近年は近代産業化遺産として一部が美術館となり、廃墟マニアの聖地となっている。

家プロジェクトと題して、古民家を展示場として活用した作品をいくつか見学。脳内の景色、南国の花など、スケールの大きな作品が面白かった。
犬島精錬所美術館は、自然の光や風を生かした三分一博志の建築が画期的だった。坑道をイメージしたつくりと鏡のマジックで強いインパクトを受けた。日本の近代化に警鐘を鳴らした作家、三島由紀夫のアートワークも展示されていたが、ここで三島が出てくるとは思わなかった。