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アン・サリー Live at 能楽堂「緑光憩音」 [ミュージック]

アン・サリー Live at 能楽堂「緑光憩音」を表参道の銕仙会(てっせんかい)能楽研修所で聞いた。能の舞台でライブというのは初めての経験。歌い手と観客の距離が近く、いい感じで盛り上がった。


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ジャズから昭和の歌謡曲、ポップスまで、オリジナルも含めて、澄んだボーカルで歌い上げる。独特のコブシのようなアクセントが曲に表情を与える。フーテンの寅さんや、銀河鉄道999もアン・サリー風に料理してしまう。999ではついグッと来て涙ぐんでしまった。


1時間半で10数曲くらい。アンコールは、最初に買ったアルバムに入っていた蘇州夜曲。内科医として現役で診療する傍ら、ライブをこなす。歌うことがきっと自らの癒しにもなっているのだろう。連休の初日に歌の診療所で気分のいい時間を過ごすことができた。


Bon Temps [Analog]

Bon Temps [Analog]

  • アーティスト: アン・サリー
  • 出版社/メーカー: ディスクユニオン
  • 発売日: 2022/12/03
  • メディア: LP Record
はじまりのとき [Analog]

はじまりのとき [Analog]

  • アーティスト: アン・サリー
  • 出版社/メーカー: ディスクユニオン
  • 発売日: 2022/12/03
  • メディア: LP Record
ヴォヤージュ

ヴォヤージュ

  • アーティスト: アン・サリー
  • 出版社/メーカー: ビデオアーツ・ミュージック
  • 発売日: 2001/10/24
  • メディア: CD


 

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中村仲蔵〜歌舞伎王国 下剋上異聞 [シネマ&演劇]

藤原竜也主演の舞台「中村仲蔵〜歌舞伎王国 下剋上異聞」を池袋のブリリアホール(豊島区立芸術文化劇場)で見た。血筋がモノをいう歌舞伎の世界で実力でスターの地位をつかんだ男の物語。今も引き継がれる團十郎や勘三郎といった大看板の役者たちが登場人物として出てきて、伝統芸能の歴史つなぐ厳しさを考えたりした。


相変わらずの藤原の熱演。市原隼人、高嶋政宏らが脇を固めた。「好きな芝居が出来ないなら、生きる意味がない」といったセリフは藤原自身の役者魂と被って見えた。舞踊もしっかり練習したのだろう。堂にいった出来栄えだった。


源孝志脚本、蓬莱竜太演出。講談やドラマにもなった話らしいが、迂闊にも知らなかった。歌舞伎の演目や役者に詳しければ、2倍楽しめる舞台だと思った。


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天才バカボンのパパなのだ [シネマ&演劇]

下北沢演劇祭で「天才バカボンのパパなのだ」(本多劇場)をみた。バカボンは、いわずと知れた赤塚不二夫のギャグ漫画の傑作だが、芝居の脚本は別役実。不条理劇の大家がどんな本を書いたのか。構えて見たが、抱腹絶倒の舞台だった。


簡単に言えば、国の治安を守り国民に対しても親切な(でも実は偉そうな)警察官をバカボン一家がおちょくる話。権力を相手に回した庶民の抵抗と位置付けられないことはないが。ただ、バカボンのパパもママもバカボンも皆マジメ。マジメにふざける、メチャクチャなことをするのだ。堪忍袋の緒が切れた署長はついに銃を抜き・・・


以前、別役の不条理劇に出演していた俳優の高田聖子さんがすぐ近くの席で観劇していて、びっくり。でも最近は舞台でバカなことを描いても、現実が結構バカなことが多いので舞台の人も大変なのではないか。でも、昭和のギャグ漫画をタイトルにした舞台はちっとも昭和くさくなくパワー全開で楽しかった。


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オデッサ [シネマ&演劇]

三谷幸喜作・演出の「オデッサ」を福岡・キャナルシティ劇場でみた。推しの宮澤エマが警部役で通訳に柿澤勇人、犯人役に迫田孝也という配役。3人の登場人物が2つの言語を話し、一つの真実に迫る。英語と日本語(薩摩弁)の掛け合いの面白さ。上質のコメディだった。


テキサスのオデッサという田舎町が舞台。ウクライナのあのオデッサに居たロシア人が米国に渡り、開拓した村という。ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、深読みすれば、言語の違いによる意思疎通の難しさや、文化・考え方の違いをコメディ仕立てで表現したとも言えるが、「まあ硬いこと言わずに笑えればいいじゃん」という感じで1時間45分を楽しんだ。


大河ドラマでの宮澤とは打って変わって、ネイティブ英語ペラペラの舞台(英語セリフ監修も務める)。逐一、舞台のバックに日本語訳が出て、なんとか事態を切り抜けよう、誤魔化そうとする「にわか通訳」とのやりとりがテンポがいい。鹿児島出身という想定の犯人役・迫田は実際に鹿児島生まれで、ネイティブの薩摩弁(特に独特のアクセント)が効果的だった。三谷のオープニング挨拶も調子に乗って鹿児島弁でねっとりとスピーチ。何もかも計算されたセリフ回しが素晴らしかった。


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コロナと潜水服 [読書日記]

奥田英朗の短編集「コロナと潜水服」を読む。何かストーリーが読みたいと思った時は、最近は奥田英朗。たまたま読んでない短編集があり、メルカリで手に入れて読んだ。


タイトルになっている作品は、まさにコロナ自粛期間の真っ只中に書かれた一編。どこで感染るかわからない未知のウイルス。世界がパニックになった4年前を思い出す。読みながら、忘れていた不安な気持ちが蘇ってきた。考えてみれば、あの時の在宅ワークはすっかり会社に定着し、ズーム会議、ズーム飲みも普通になった。作品を読みながら、過去のこととしてコロナの時代を読んでいるのだ、客観視できるようになったのだと時の流れを感じたし、感染症と戦ってきた人類の歴史、人類のしたたかさを改めて思ったりした。


どの作品も日常生活でありそうなシチュエーションを「奇想」でもって、予想外の方向へ展開していく。でも最後は、「そうだよね」という暖かなところにおさまる。真っ当な人生の考え方、愛のあるストーリーテラーだと思った。


巻末に作品中に出てくる楽曲のプレイリストが付いていた。QRコードを読み込むと、Spotifyに飛び曲のさわりが聞けるという趣向。面白い試みだと思った。


コロナと潜水服 (光文社文庫)

コロナと潜水服 (光文社文庫)

  • 作者: 奥田 英朗
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2023/12/12
  • メディア: Kindle版

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イプセン [読書日記]

井上ひさしの戯曲講座「芝居の面白さ、教えます」<海外編>のイプセンの項を読む。近代演劇の始祖、問題演劇を書き始めた人と言われるノルウェーの劇作家。近年海外でも再評価が進み、舞台で上演される演目が増えているという。


演劇とは、という問いに対する言葉がいくつか。

・私たちが見ないで済ましていることや、見ようとしても見えないものを舞台にしたり小説に書いたり絵で描いたりすると、それを見たり聴いたりした人たちは、自分の心の奥の方にあって、普段はなるべく見ないようにしていることに気づかされる。

・演劇の本質というのは、今の社会で生きている人たちが持っている心の中の、何か見ないふりをしている大事な問題を舞台に出すこと。手法はあまり関係ない。


「ヘッダ・ガーブレル」と「人形の家」を題材に講釈が進むが、導入部の見事さを絶賛し、芝居をやる人はお手本にすべきだと指摘する。イプセンの「市民の家庭の中から社会の問題を書く」というスタンスが、当時の演劇界では新しかった。それは今も変わりがない。


「レトロスペクティブ・テクニック」=懐古分析法は、登場人物の履歴・過去を細かく設定しておき、その中から必要なものだけをバラバラにして舞台の会話の中に当てはめていく手法。演劇的アイロニーという言葉も知った。


目標がないと人間は生きられない。しかし、その目標を達成すれば幸せかというと、必ずしもそうではない。こうした自己実現というのは不毛なのか。「人形の家」では、そうした時代の病とも言えるテーマを掲げている。女性の自立の物語として読まれることが多いが、それだけではない。


人形の家(新潮文庫)

人形の家(新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2024/02/10
  • メディア: 文庫
ヘッダ・ガーブレル (岩波文庫 赤 750-5)

ヘッダ・ガーブレル (岩波文庫 赤 750-5)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1996/06/17
  • メディア: 文庫

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旅する哲学 大人のための旅行術 [読書日記]

「旅する哲学 大人のための旅行術」(アラン・ド・ボトン著、安引宏訳)を読む。長いこと書棚にあったが、ついに読む時が来た。ボードレールやフロベール、フンボルト、ワーズワース、ゴッホ、ラスキンら先達の旅の作品を綴りつつ、著者自らも旅に出て、そのあり方を考える。哲学と言っても難しい話ではなく、より楽しい旅の流儀を提案する一冊だ。


<旅の効用>

・旅は思索の助産婦である。移動中のジェット機や船や列車ほど、心の中の会話を引き出す場はまずない。大問題を考えるときはしばしば大きな風景が求められ、新しいことを考えるためには新しい場が必要になる。内省的なもの思いは、流れゆく景色とともに深まりやすい。

・私たちが本当の自分に出会うのに、家庭は必ずしもベストの場とは言えない。家具調度は変わらないから、私たちは変わらないと主張する。家庭的な設定は私たちを普通の暮らしをしている人間であることに繋ぎ止め続ける。普通の暮らしをしている私たちが、私たちの本質的な姿ではないかもしれないのだ。

<ラスキンの指摘>

実に美しいと心を打つ場所の多くは、美学的な規準(色彩の適合性、左右対称、均衡が取れているなど)に基づくのではなく、心理的な規準(私たちにとって重要な価値、あるいは雰囲気を備えているかどうか)に基づく。


随所にアンダーラインを引きたくなる指摘が溢れている。それにしても人がまだ自由に地球を動き回れなかった頃、ヨーロッパ人にとっての新大陸を探検し、次々と未知のものを「発見」した探検家・研究者たちの楽しさと言ったら言葉に表せないだろう。南米を踏査したフンボルトの話を読んで特に羨ましく思った。


目的もなく彷徨うのが都市を知る一番の方法、カメラよりスケッチブックを持っていこう、一人で旅をしよう。どこかに今すぐにでも行きたい!!


旅する哲学 ―大人のための旅行術

旅する哲学 ―大人のための旅行術

  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2004/04/05
  • メディア: 単行本


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詩の力 [読書日記]

吉本隆明の「詩の力」を再読する。文庫本の奥付によると、10年以上前に読んだらしいが、内容はすっかり忘れていた。ただ、茨木のり子や谷川俊太郎のページにドッグイヤーがあり、この本をきっかけに詩集に手を出したんだったっけと記憶を辿る。


どちらかというと(というか、はっきり言って)散文頭なので、詩心はない。でも、吉本の批評を読んでいると、詩を読んでみようかという気になる。暗喩(隠喩)は、描く対象を直接に他のものに例える表現方法(例えば、君は花だ)、直喩は二つの事物を比較して示す修辞法(例えば、雪のような肌)といった基本のキから学ぶ。


熊本生まれの谷川雁は、西日本新聞記者出身。森崎和江、上野英信らと「サークル村」を創刊し、三池闘争に加わり革命戦士として戦った。背景にイデオロギーを持った迫力ある詩に目を見張った。また時を置いてページを開けば、新たな発見があるかもしれない。そんな一冊である。


詩の力 (新潮文庫)

詩の力 (新潮文庫)

  • 作者: 隆明, 吉本
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2008/12/20
  • メディア: 文庫

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