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友達 [読書日記]

安部公房の戯曲「友達」を読む。男の部屋にいきなり押しかけてきた9人の家族が、善意に満ちた笑顔で隣人愛を説き男を翻弄する。谷崎潤一郎賞受賞の作品。


「一人でいたい」という男に「人は一人で生きていけないんだよ」と、お節介な心配をする押しかけ家族。最初は抗っていた男は次第に「世間」という同調圧力に飲み込まれていく。作品が執筆された頃は、同調圧力という言葉は一般的ではなかったろうが、他者との関係をテーマにそういった現代の不安を描いたのは間違いない。「逆らいさえしなければ、私たちはただの世間にしかすぎなかったのに」。ドス黒い笑いで幕が下りる。


戯曲を読む経験はあまりしたことはなかったが、安部公房の戯曲は小説っぽいところがあり、すんなり頭に入ってきた(井上ひさしはこの安部作品について戯曲としては不満と書いていたが)。この何年か、結構、演劇を見てきたので、ト書きから舞台を想像できた。


友達・棒になった男 (新潮文庫)

友達・棒になった男 (新潮文庫)

  • 作者: 公房, 安部
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1987/08/28
  • メディア: 文庫

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