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ヤマトタケルの日本史 [読書日記]

「女になった英雄たち」の副題がついた国際日本文化研究センター所長・井上章一さんの新刊。なぜ日本の勇者は美しき暗殺者なのか?という帯の言葉に惹かれて手に取る。


建国神話のヤマトタケルが女装してクマソの首領を殺した話。戦前まで小学校の教科書に載っていたらしいが、自分は初耳でまずびっくり。牛若丸=源義経の五条大橋のくだりはドラマなどで知ってはいたが、女装で相手を油断させたとは知らなかった。熱田神宮の楊貴妃伝説も「へえ」と思った。


「性別越境」への憧れを旧帝国陸軍の女装大会まで持ち出して解説する。みめ麗しき美少年が持て囃される日本人の民族感情にまで分け入る井上節。お得意の名調子はあなどれないなあ。


ヤマトタケルの日本史 女になった英雄たち

ヤマトタケルの日本史 女になった英雄たち

  • 作者: 井上章一
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2024/02/21
  • メディア: Kindle版

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センスの哲学 [読書日記]

「センスの哲学」という絶妙なタイトルに惹き寄せられて本を手に取った。立命館大の千葉雅也教授著。センスとはそもそも何なのかという命題の解説より、美術が興味のメインにある著者が芸術全般への接し方を説き、暮らしに芸術を取り入れることを勧めるくだりに心を動かされた。


例えば絵画。作品の意味を理解するだけではなく、絵画の中にリズムを見出す鑑賞のあり方を説く。映画も音楽もリズムで読み解くことができ、Chat GPTの生成する文章は、脱意味化されたリズムであると。ライフハックとして、何かをやるときには、実力がまだ足りないという足りなさに注目するのでなく、「とりあえず手持ちの技術と、自分から湧いてくる偶然性で何ができるか」というふうに考えるという。


・芸術に関わるとは、そもそも無駄なものである時間を味わうことである。

・現実の目的達成と違い、芸術は多様性や相対性を教えてくれる。人生のリズムもいろいろでいいじゃないかと。

・映画でも真意を見抜けるだろうかと自分を責める見方はしない。自分にはここが気になる、それだけでOK。


センスの哲学 (文春e-book)

センスの哲学 (文春e-book)

  • 作者: 千葉 雅也
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2024/04/05
  • メディア: Kindle版

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 [読書日記]

安部公房の芥川受賞作「壁」を読む。1951年、27歳の時の受賞作品。解説によると、砂漠や壁といった安部の好むモチーフが出ていて、その後の作品につながっていったという。


S・カルマ氏の犯罪、バベルの塔の狸、赤い繭の3部構成だが、第2部のバベルの塔の狸が一番面白かった。影を盗まれて透明になった男(眼だけは見える)と、影を食べた狸。寓話の建て付けで人間の実存について語る。


どの物語にも壁(都会の片隅の狭い部屋の中など)が出てくるのだが、読んでいて村上春樹の「街とその不確かな壁」に出てきた風景を頭の中に思い描いてしまった。シュールレアリスムの世界観、どこか通じるものがあるような気がする。


壁 (新潮文庫)

壁 (新潮文庫)

  • 作者: 公房, 安部
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2024/05/09
  • メディア: 文庫

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逃げ切れた夢 [シネマ&演劇]

光石研主演の「逃げ切れた夢」をアマゾンプライムで見る。北九州出身ということで兼ねてから親近感があったが、主演映画を見るのは初めて(それまでに主演があったかどうか知らないが)。中高年の侘しさ、寂しさが出ていて、切ない気持ちになる映画だった。


定年間際の定時制高校の教頭先生という役柄。悪い人ではないんだろうが、どこか小心で不安気な表情は実に光石らしい。冷え切った家庭(妻役の坂井真紀がとても冷たくて怖かった!)、しらけた学校、旧友との仲も随分と疎遠な様子。自身が記憶を失くす病気と分かり、急に周囲とコミュニケーションを取ろうとするが、気持ち悪がられて却って浮いた存在になってしまう。


全編を通して会話場面での沈黙の長いこと。喋っている部分より会話がない時間の方が長かったような気がする。これも、一生懸命に言葉を探す主人公を際立たせる、二ノ宮隆太郎監督の狙いなのか。教育現場の大変さがよく出ていたし、妻と夫の関係についても、身の置き所がない嫌な雰囲気がよく出ていたが、一番耳に残ったのは北九州弁「しゃあしいちゃ」(友人役の松重豊)かな。


逃げきれた夢 [Blu-ray]

逃げきれた夢 [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: Happinet
  • 発売日: 2023/12/06
  • メディア: Blu-ray


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わしの眼は十年先が見える [読書日記]

倉敷に紡績会社を興し大原美術館に名前を残す「大原孫三郎の生涯」と副題のついた評伝。かの城山三郎の著作である。先日行った岡山・倉敷観光の折に見つけた文庫本をさっそく読了した。


ストレートなタイトル通り、先進的な取り組みを企業の枠からはみ出して行い、孤児院や社会・労働問題研究所、病院などを次々と立ち上げた。孫三郎は、企業の本分は人を育て、地域を繁栄に導く社会貢献にありとの信念を貫き通したという。


石井十次をはじめ多彩な友との出会いを大事にし、学者や社員らを海外へ送り学ばせた。知識や経験を「自得」することが大事とし、自らはもっぱら耳学問で「不学の大学者」と呼ばれたのが面白い。地方の資産家に群がる人たちに気前よく金を出したようで、いわゆるノブリス・オブリージュを実践した人と言える。もちろん毀誉褒貶はあったろうが、明治の気骨のある人だったらしい。企業群や美術館に加え、有名な研究所や倉敷中央病院までも作った人だとは知らなかった。人との出会いの大切さを教えてくれる一冊だった。


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大原美術館のホール


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赤い屋根が印象的な倉敷中央病院


わしの眼は十年先が見える: 大原孫三郎の生涯 (新潮文庫)

わしの眼は十年先が見える: 大原孫三郎の生涯 (新潮文庫)

  • 作者: 三郎, 城山
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1997/05/01
  • メディア: 文庫

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泥人魚 [シネマ&演劇]

劇団唐組「泥人魚」の岡山公演を岡山市旭川京橋河川敷で見た。2003年度の紀伊國屋演劇賞、鶴屋南北戯曲賞などを受賞した唐十郎の作品。21年ぶりの再演ということで岡山まで足を伸ばした。


長崎の諫早湾干拓事業から想を得た。鉄板がギロチンのように海を仕切る情景、泥の干潟が舞台に再現される。諫早出身の浪漫派詩人・伊東静雄をもじった伊藤が営むブリキ屋を舞台に騒々しく時にユーモラスで、時にロマンチックな掛け合いが展開する。


義眼や人魚の鱗、柱時計など、唐の好むモチーフが次々と出てきて、物語は迷路に迷い込んでいく。紅テントの中で200人近い観客は足腰の辛さに耐えながら、必死に2時間余りの舞台に集中する。福本雄樹、大鶴美仁音、稲荷卓央、藤井由紀、久保井研らが対峙し、一気にクライマックスに傾れ込んでいく。俳優と観客の熱量が一体となって盛り上がる、ここにテント芝居の妙味があると改めて思った。


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河畔にある世界で初めて空を飛んだ表具師の碑!


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暇と退屈の倫理学 [読書日記]

國分功一郎さんの「暇と退屈の倫理学」を読む。ハイデッガーやニーチェら哲学者の言葉を批判的に論じながら、暇と退屈が抱える問題点を探る。論理的な思考の進め方が明晰で楽しい。


動物と人間の違いを語る第6章の人間学が秀逸。動物にはそれぞれの視界があり、時間がある。「環世界」という概念で、生き物によって生きている空間や時間軸が変わるという考え方にいたく感動した。人間は「環世界移動能力」が高いという特徴があり、それが動物との違いであると指摘する。


人はいつしか「なんとなく退屈」して「気晴らし」を求める。退屈するのは贅沢であり、退屈する間もなく労働に汗を流す人もいる。ただ世界が平和で皆が豊かになればなったで(そんなことはあり得ないだろうが)、人は退屈し興奮を求めて争いの場を作り出す。結論は消費社会における現代人の退屈に言及する。人は消費ではなく、浪費をすべきで、それこそが気晴らしであるという。


暇と退屈の倫理学(新潮文庫)

暇と退屈の倫理学(新潮文庫)

  • 作者: 國分功一郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2021/12/23
  • メディア: Kindle版

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ボクの音楽武者修行 [読書日記]

今年2月6日に亡くなった世界のマエストロ小澤征爾の「ボクの音楽武者修行」を読了した。26歳の駆け出し指揮者だった小澤が綴った青春記。音楽が好きでクラシックの故郷ヨーロッパに単身乗り込む若き日の小澤青年、なんと純粋で瑞々しいことか。

今のように気軽に海外へ行けない昭和30年代。貨物船に乗せてもらい、上陸してからはスクーターでパリを目指す。決して裕福な家柄ではなく、金の工面などはいろいろと苦労したことなどを初めて知った。クラシックファンでなくとも知っているカラヤン、バーンスタイン、ミュンシャといった巨匠に教えを乞う。ブザンソン、タングルウッド、ベルリン、ニューヨークといった街のコンクールやオーケストラの指揮者として、ひたすらスコアを読み勉強する日々が綴られている。


指揮者によってオーケストラのアンサンブルの良し悪しが決まる。まさに棒振り屋の腕次第。久しぶりにクラシックを聞くかなと思ったりする。江戸京子(後の妻)、田中路子(欧州在住のオペラ歌手)、広中平祐(ノーベル賞の数学者)といった著名人との出会いも書かれていて興味深かった。


ボクの音楽武者修行 (新潮文庫)

ボクの音楽武者修行 (新潮文庫)

  • 作者: 小澤 征爾
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2024/04/09
  • メディア: 文庫

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アメリカ映画の文化副読本 [読書日記]

「アメリカ映画の文化副読本」(渡辺将人著)を読む。邦画が受賞した今年のアカデミー賞もあり、ハリウッドシネマ関連の一冊を手に取った。外国の映画と言えば、圧倒的に米国産が多い。でも、どのくらい米国社会のことを知っているかというと、意外と知らなかったりする。娯楽映画なら細かい設定は気にしないが、シリアスものだと結構「なぜ」というところがありながら、そこをすっ飛ばして鑑賞しているのだと思う。


例えば、ニューヨークのマンハッタンでも住む地区によって「人種」が違う。ハーレム、アップタウン、ミッドタウン、ダウンタウン。アップタウンでもセントラルパークを挟んで西と東で住人が違ってくる。映画では主人公がどこに住んでいるかが重要で、それによって社会での地位やライフスタイルの描き方が違ってくるという。若い時にニューヨークに行っておけば、もっとハリウッド映画が楽しめたのにと思ったりした。


今年は4年に一度の大統領選イヤー。米国という国はなくて、それぞれの州が小さなクニ。西海岸と東海岸では、文化はまるっきり違う。世界共通語である英語が母語である合衆国の人たちは外国語を習わないのが一般的で、そもそも外国語大学などはないという。外国語を知らなくてもビジネスで困ることはあまりない。習う人もスペイン、フランス、ドイツ語で小学校から英語を習う日本のようなことはない。そのことが米国人にとっていいことなのかどうかは分からないが。いろいろと紹介してあるハリウッド映画を今度の連休にでも見てみようかと思う。


アメリカ映画の文化副読本

アメリカ映画の文化副読本

  • 作者: 渡辺将人
  • 出版社/メーカー: 日経BP 日本経済新聞出版
  • 発売日: 2024/01/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)





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もう明日が待っている [読書日記]

放送作家の鈴木おさむ著「もう明日が待っている」を読む。あの国民的アイドルグループSMAPの誕生から解散までを小説仕立てで描く。彼らの近くにいたスタッフとして、親しみを込めてアイドルと、その時代を記録していて面白かった。


芸能好きなので、たまにこういった内幕モノめいた本を読みたくなる。鈴木おさむは今年でテレビの仕事から引退を宣言していて、タクヤと同い年の仲間としてスマスマを作り、彼らと並走した日々を一冊に残しておきたかったらしい。


ジャニーズ事件の「あの人」からの指示に逆らえず、解散に至ったエピソードが一番の読みどころ。月曜10時のバラエティ番組内での異様な生放送は記憶に残っている。再結成のウワサを聞く昨今、中年アイドルの復活はあるのだろうか?


もう明日が待っている (文春e-book)

もう明日が待っている (文春e-book)

  • 作者: 鈴木 おさむ
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2024/03/27
  • メディア: Kindle版



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君たちはどう生きるか [シネマ&演劇]

アカデミー賞長編アニメ部門でオスカーを獲得した宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」を遅ればせながら見に行く。ロングラン上映していたものの、上映時間が夜遅くなど日程が合わなかったが、アカデミー受賞で上映枠が拡大し、めでたく鑑賞の運びとなった。


戦争で疎開した少年・真人(まひと)の夏が描かれている。母親を空襲で亡くし父親は再婚、少年の複雑な思いが静かに語られる。テーマは大きくて生命の尊さとか、子孫とか、輪廻とかいう言葉が脳裏に浮かんだ。原作同名の岩波文庫の原作は読んでいないが、映画の原作・脚本も手がけた宮崎監督の哲学・思想がそのまま反映されているのだろうか。


地獄・天国に出てくるキャラは鳥がメーン。ルーツは恐竜と言われる鳥類はつぶさによく見ると結構グロテスクな部分もあったりする。そこをデフォルメして恐ろしかったり滑稽だったりするキャラを設定したのだろう。人気・実力俳優が声優として多く出演していて、エンディングロールを見ながらへえと思ったりした。


君たちはどう生きるか (岩波文庫 青 158-1)

君たちはどう生きるか (岩波文庫 青 158-1)

  • 作者: 吉野 源三郎
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1982/11/16
  • メディア: 文庫
漫画 君たちはどう生きるか

漫画 君たちはどう生きるか

  • 出版社/メーカー: マガジンハウス
  • 発売日: 2017/09/19
  • メディア: Kindle版
君たちはどう生きるか (ポプラポケット文庫)

君たちはどう生きるか (ポプラポケット文庫)

  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2023/09/29
  • メディア: Kindle版
スタジオジブリ絵コンテ全集23 君たちはどう生きるか (スタジオジブリ絵コンテ全集 23)

スタジオジブリ絵コンテ全集23 君たちはどう生きるか (スタジオジブリ絵コンテ全集 23)

  • 作者: 宮﨑駿
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2023/11/01
  • メディア: 単行本



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東大生と学ぶ語彙力 [読書日記]

難しいことをやさしく書いてあるので、たまに読むジュニア新書。ちくまプリマー新書の「東大生と学ぶ語彙力」(西岡壱誠著)を読む。常々、小さい頃から外国語を学ぶより、まず日本語の語彙の力こそ付けるべきだと考えている。この本は受験を制するにも問題文を正しく読み解く語彙力が必要だと説く。その通りだと思う。


数学に苦手意識がある自分。今でも必要条件と十分条件、数学的帰納法と演繹法という話を聞くと、モヤモヤする。たぶん、その言葉が出てきた時にキチンと理解していれば理系に進んだろうにと、今更ながら思う。必要十分条件では、豆腐料理の話で、帰納法と演繹法は野菜好きの話で分かりやすく解説してある。


得意の社会でも食糧と食料の違い(食糧は主食、食料はその他の食べ物も含む)を再確認したし、歴史というのは結局は領土の奪い合いがテーマになっていると指摘され、確かにと頷く。日本語の小説を英語に訳す勉強法でもっと語彙力が高まるという話を読み、かつてフランス語を勉強して日本語の言葉の奥深さを感じたことを思い出した。古語の「こころ」という言葉の多様性も頭に残った。古語辞典を久しぶりに開いた。


東大生と学ぶ語彙力 (ちくまプリマー新書)

東大生と学ぶ語彙力 (ちくまプリマー新書)

  • 作者: 西岡壱誠
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2023/12/07
  • メディア: Kindle版

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マティス展とローランサン展 [アート]

六本木の国立新美術館で「マティス展」を見た。「ブルー・ヌード(青い人)」に代表されるデザイン性の高い作品。「自由なフォルム」は最近の自分の気分にぴったり。こうでなければならない、という拘りを捨てて毎日を過ごす。そんな気持ちをマティスの作品は呼び起こしてくれた。
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多くの作品が撮影可で油彩から切り紙絵に変わっていくさまを理解できた。てっきり絵の具だったと思っていた作品が色紙を貼り付けた絵だったとは。モダンな帯のような柄の大きなデザイン。記念に買ったシークレット・ポーチはそのデザインだった。マティスがデザインしたヴァンスのロザリオ礼拝堂も再現されていた。
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東京滞在中には、京橋のアーティゾン美術館であっていた「マリー・ローランサン 時代を写す眼」展も見た。久しぶりのローランサン。柔らかなタッチと明るい色使いがパリの空気を伝える。ミラボー橋の歌詞を口ずさむ。二日酔いの少しだるい心身をやさしく包み込んでくれるようだった。
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アン・サリー Live at 能楽堂「緑光憩音」 [ミュージック]

アン・サリー Live at 能楽堂「緑光憩音」を表参道の銕仙会(てっせんかい)能楽研修所で聞いた。能の舞台でライブというのは初めての経験。歌い手と観客の距離が近く、いい感じで盛り上がった。


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ジャズから昭和の歌謡曲、ポップスまで、オリジナルも含めて、澄んだボーカルで歌い上げる。独特のコブシのようなアクセントが曲に表情を与える。フーテンの寅さんや、銀河鉄道999もアン・サリー風に料理してしまう。999ではついグッと来て涙ぐんでしまった。


1時間半で10数曲くらい。アンコールは、最初に買ったアルバムに入っていた蘇州夜曲。内科医として現役で診療する傍ら、ライブをこなす。歌うことがきっと自らの癒しにもなっているのだろう。連休の初日に歌の診療所で気分のいい時間を過ごすことができた。


Bon Temps [Analog]

Bon Temps [Analog]

  • アーティスト: アン・サリー
  • 出版社/メーカー: ディスクユニオン
  • 発売日: 2022/12/03
  • メディア: LP Record
はじまりのとき [Analog]

はじまりのとき [Analog]

  • アーティスト: アン・サリー
  • 出版社/メーカー: ディスクユニオン
  • 発売日: 2022/12/03
  • メディア: LP Record
ヴォヤージュ

ヴォヤージュ

  • アーティスト: アン・サリー
  • 出版社/メーカー: ビデオアーツ・ミュージック
  • 発売日: 2001/10/24
  • メディア: CD


 

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中村仲蔵〜歌舞伎王国 下剋上異聞 [シネマ&演劇]

藤原竜也主演の舞台「中村仲蔵〜歌舞伎王国 下剋上異聞」を池袋のブリリアホール(豊島区立芸術文化劇場)で見た。血筋がモノをいう歌舞伎の世界で実力でスターの地位をつかんだ男の物語。今も引き継がれる團十郎や勘三郎といった大看板の役者たちが登場人物として出てきて、伝統芸能の歴史つなぐ厳しさを考えたりした。


相変わらずの藤原の熱演。市原隼人、高嶋政宏らが脇を固めた。「好きな芝居が出来ないなら、生きる意味がない」といったセリフは藤原自身の役者魂と被って見えた。舞踊もしっかり練習したのだろう。堂にいった出来栄えだった。


源孝志脚本、蓬莱竜太演出。講談やドラマにもなった話らしいが、迂闊にも知らなかった。歌舞伎の演目や役者に詳しければ、2倍楽しめる舞台だと思った。


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天才バカボンのパパなのだ [シネマ&演劇]

下北沢演劇祭で「天才バカボンのパパなのだ」(本多劇場)をみた。バカボンは、いわずと知れた赤塚不二夫のギャグ漫画の傑作だが、芝居の脚本は別役実。不条理劇の大家がどんな本を書いたのか。構えて見たが、抱腹絶倒の舞台だった。


簡単に言えば、国の治安を守り国民に対しても親切な(でも実は偉そうな)警察官をバカボン一家がおちょくる話。権力を相手に回した庶民の抵抗と位置付けられないことはないが。ただ、バカボンのパパもママもバカボンも皆マジメ。マジメにふざける、メチャクチャなことをするのだ。堪忍袋の緒が切れた署長はついに銃を抜き・・・


以前、別役の不条理劇に出演していた俳優の高田聖子さんがすぐ近くの席で観劇していて、びっくり。でも最近は舞台でバカなことを描いても、現実が結構バカなことが多いので舞台の人も大変なのではないか。でも、昭和のギャグ漫画をタイトルにした舞台はちっとも昭和くさくなくパワー全開で楽しかった。


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オデッサ [シネマ&演劇]

三谷幸喜作・演出の「オデッサ」を福岡・キャナルシティ劇場でみた。推しの宮澤エマが警部役で通訳に柿澤勇人、犯人役に迫田孝也という配役。3人の登場人物が2つの言語を話し、一つの真実に迫る。英語と日本語(薩摩弁)の掛け合いの面白さ。上質のコメディだった。


テキサスのオデッサという田舎町が舞台。ウクライナのあのオデッサに居たロシア人が米国に渡り、開拓した村という。ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、深読みすれば、言語の違いによる意思疎通の難しさや、文化・考え方の違いをコメディ仕立てで表現したとも言えるが、「まあ硬いこと言わずに笑えればいいじゃん」という感じで1時間45分を楽しんだ。


大河ドラマでの宮澤とは打って変わって、ネイティブ英語ペラペラの舞台(英語セリフ監修も務める)。逐一、舞台のバックに日本語訳が出て、なんとか事態を切り抜けよう、誤魔化そうとする「にわか通訳」とのやりとりがテンポがいい。鹿児島出身という想定の犯人役・迫田は実際に鹿児島生まれで、ネイティブの薩摩弁(特に独特のアクセント)が効果的だった。三谷のオープニング挨拶も調子に乗って鹿児島弁でねっとりとスピーチ。何もかも計算されたセリフ回しが素晴らしかった。


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コロナと潜水服 [読書日記]

奥田英朗の短編集「コロナと潜水服」を読む。何かストーリーが読みたいと思った時は、最近は奥田英朗。たまたま読んでない短編集があり、メルカリで手に入れて読んだ。


タイトルになっている作品は、まさにコロナ自粛期間の真っ只中に書かれた一編。どこで感染るかわからない未知のウイルス。世界がパニックになった4年前を思い出す。読みながら、忘れていた不安な気持ちが蘇ってきた。考えてみれば、あの時の在宅ワークはすっかり会社に定着し、ズーム会議、ズーム飲みも普通になった。作品を読みながら、過去のこととしてコロナの時代を読んでいるのだ、客観視できるようになったのだと時の流れを感じたし、感染症と戦ってきた人類の歴史、人類のしたたかさを改めて思ったりした。


どの作品も日常生活でありそうなシチュエーションを「奇想」でもって、予想外の方向へ展開していく。でも最後は、「そうだよね」という暖かなところにおさまる。真っ当な人生の考え方、愛のあるストーリーテラーだと思った。


巻末に作品中に出てくる楽曲のプレイリストが付いていた。QRコードを読み込むと、Spotifyに飛び曲のさわりが聞けるという趣向。面白い試みだと思った。


コロナと潜水服 (光文社文庫)

コロナと潜水服 (光文社文庫)

  • 作者: 奥田 英朗
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2023/12/12
  • メディア: Kindle版

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イプセン [読書日記]

井上ひさしの戯曲講座「芝居の面白さ、教えます」<海外編>のイプセンの項を読む。近代演劇の始祖、問題演劇を書き始めた人と言われるノルウェーの劇作家。近年海外でも再評価が進み、舞台で上演される演目が増えているという。


演劇とは、という問いに対する言葉がいくつか。

・私たちが見ないで済ましていることや、見ようとしても見えないものを舞台にしたり小説に書いたり絵で描いたりすると、それを見たり聴いたりした人たちは、自分の心の奥の方にあって、普段はなるべく見ないようにしていることに気づかされる。

・演劇の本質というのは、今の社会で生きている人たちが持っている心の中の、何か見ないふりをしている大事な問題を舞台に出すこと。手法はあまり関係ない。


「ヘッダ・ガーブレル」と「人形の家」を題材に講釈が進むが、導入部の見事さを絶賛し、芝居をやる人はお手本にすべきだと指摘する。イプセンの「市民の家庭の中から社会の問題を書く」というスタンスが、当時の演劇界では新しかった。それは今も変わりがない。


「レトロスペクティブ・テクニック」=懐古分析法は、登場人物の履歴・過去を細かく設定しておき、その中から必要なものだけをバラバラにして舞台の会話の中に当てはめていく手法。演劇的アイロニーという言葉も知った。


目標がないと人間は生きられない。しかし、その目標を達成すれば幸せかというと、必ずしもそうではない。こうした自己実現というのは不毛なのか。「人形の家」では、そうした時代の病とも言えるテーマを掲げている。女性の自立の物語として読まれることが多いが、それだけではない。


人形の家(新潮文庫)

人形の家(新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2024/02/10
  • メディア: 文庫
ヘッダ・ガーブレル (岩波文庫 赤 750-5)

ヘッダ・ガーブレル (岩波文庫 赤 750-5)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1996/06/17
  • メディア: 文庫

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旅する哲学 大人のための旅行術 [読書日記]

「旅する哲学 大人のための旅行術」(アラン・ド・ボトン著、安引宏訳)を読む。長いこと書棚にあったが、ついに読む時が来た。ボードレールやフロベール、フンボルト、ワーズワース、ゴッホ、ラスキンら先達の旅の作品を綴りつつ、著者自らも旅に出て、そのあり方を考える。哲学と言っても難しい話ではなく、より楽しい旅の流儀を提案する一冊だ。


<旅の効用>

・旅は思索の助産婦である。移動中のジェット機や船や列車ほど、心の中の会話を引き出す場はまずない。大問題を考えるときはしばしば大きな風景が求められ、新しいことを考えるためには新しい場が必要になる。内省的なもの思いは、流れゆく景色とともに深まりやすい。

・私たちが本当の自分に出会うのに、家庭は必ずしもベストの場とは言えない。家具調度は変わらないから、私たちは変わらないと主張する。家庭的な設定は私たちを普通の暮らしをしている人間であることに繋ぎ止め続ける。普通の暮らしをしている私たちが、私たちの本質的な姿ではないかもしれないのだ。

<ラスキンの指摘>

実に美しいと心を打つ場所の多くは、美学的な規準(色彩の適合性、左右対称、均衡が取れているなど)に基づくのではなく、心理的な規準(私たちにとって重要な価値、あるいは雰囲気を備えているかどうか)に基づく。


随所にアンダーラインを引きたくなる指摘が溢れている。それにしても人がまだ自由に地球を動き回れなかった頃、ヨーロッパ人にとっての新大陸を探検し、次々と未知のものを「発見」した探検家・研究者たちの楽しさと言ったら言葉に表せないだろう。南米を踏査したフンボルトの話を読んで特に羨ましく思った。


目的もなく彷徨うのが都市を知る一番の方法、カメラよりスケッチブックを持っていこう、一人で旅をしよう。どこかに今すぐにでも行きたい!!


旅する哲学 ―大人のための旅行術

旅する哲学 ―大人のための旅行術

  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2004/04/05
  • メディア: 単行本


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