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旅する哲学 大人のための旅行術 [読書日記]

「旅する哲学 大人のための旅行術」(アラン・ド・ボトン著、安引宏訳)を読む。長いこと書棚にあったが、ついに読む時が来た。ボードレールやフロベール、フンボルト、ワーズワース、ゴッホ、ラスキンら先達の旅の作品を綴りつつ、著者自らも旅に出て、そのあり方を考える。哲学と言っても難しい話ではなく、より楽しい旅の流儀を提案する一冊だ。


<旅の効用>

・旅は思索の助産婦である。移動中のジェット機や船や列車ほど、心の中の会話を引き出す場はまずない。大問題を考えるときはしばしば大きな風景が求められ、新しいことを考えるためには新しい場が必要になる。内省的なもの思いは、流れゆく景色とともに深まりやすい。

・私たちが本当の自分に出会うのに、家庭は必ずしもベストの場とは言えない。家具調度は変わらないから、私たちは変わらないと主張する。家庭的な設定は私たちを普通の暮らしをしている人間であることに繋ぎ止め続ける。普通の暮らしをしている私たちが、私たちの本質的な姿ではないかもしれないのだ。

<ラスキンの指摘>

実に美しいと心を打つ場所の多くは、美学的な規準(色彩の適合性、左右対称、均衡が取れているなど)に基づくのではなく、心理的な規準(私たちにとって重要な価値、あるいは雰囲気を備えているかどうか)に基づく。


随所にアンダーラインを引きたくなる指摘が溢れている。それにしても人がまだ自由に地球を動き回れなかった頃、ヨーロッパ人にとっての新大陸を探検し、次々と未知のものを「発見」した探検家・研究者たちの楽しさと言ったら言葉に表せないだろう。南米を踏査したフンボルトの話を読んで特に羨ましく思った。


目的もなく彷徨うのが都市を知る一番の方法、カメラよりスケッチブックを持っていこう、一人で旅をしよう。どこかに今すぐにでも行きたい!!


旅する哲学 ―大人のための旅行術

旅する哲学 ―大人のための旅行術

  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2004/04/05
  • メディア: 単行本


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