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泥人魚 [シネマ&演劇]

劇団唐組「泥人魚」の岡山公演を岡山市旭川京橋河川敷で見た。2003年度の紀伊國屋演劇賞、鶴屋南北戯曲賞などを受賞した唐十郎の作品。21年ぶりの再演ということで岡山まで足を伸ばした。


長崎の諫早湾干拓事業から想を得た。鉄板がギロチンのように海を仕切る情景、泥の干潟が舞台に再現される。諫早出身の浪漫派詩人・伊東静雄をもじった伊藤が営むブリキ屋を舞台に騒々しく時にユーモラスで、時にロマンチックな掛け合いが展開する。


義眼や人魚の鱗、柱時計など、唐の好むモチーフが次々と出てきて、物語は迷路に迷い込んでいく。紅テントの中で200人近い観客は足腰の辛さに耐えながら、必死に2時間余りの舞台に集中する。福本雄樹、大鶴美仁音、稲荷卓央、藤井由紀、久保井研らが対峙し、一気にクライマックスに傾れ込んでいく。俳優と観客の熱量が一体となって盛り上がる、ここにテント芝居の妙味があると改めて思った。


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河畔にある世界で初めて空を飛んだ表具師の碑!


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暇と退屈の倫理学 [読書日記]

國分功一郎さんの「暇と退屈の倫理学」を読む。ハイデッガーやニーチェら哲学者の言葉を批判的に論じながら、暇と退屈が抱える問題点を探る。論理的な思考の進め方が明晰で楽しい。


動物と人間の違いを語る第6章の人間学が秀逸。動物にはそれぞれの視界があり、時間がある。「環世界」という概念で、生き物によって生きている空間や時間軸が変わるという考え方にいたく感動した。人間は「環世界移動能力」が高いという特徴があり、それが動物との違いであると指摘する。


人はいつしか「なんとなく退屈」して「気晴らし」を求める。退屈するのは贅沢であり、退屈する間もなく労働に汗を流す人もいる。ただ世界が平和で皆が豊かになればなったで(そんなことはあり得ないだろうが)、人は退屈し興奮を求めて争いの場を作り出す。結論は消費社会における現代人の退屈に言及する。人は消費ではなく、浪費をすべきで、それこそが気晴らしであるという。


暇と退屈の倫理学(新潮文庫)

暇と退屈の倫理学(新潮文庫)

  • 作者: 國分功一郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2021/12/23
  • メディア: Kindle版

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ボクの音楽武者修行 [読書日記]

今年2月6日に亡くなった世界のマエストロ小澤征爾の「ボクの音楽武者修行」を読了した。26歳の駆け出し指揮者だった小澤が綴った青春記。音楽が好きでクラシックの故郷ヨーロッパに単身乗り込む若き日の小澤青年、なんと純粋で瑞々しいことか。

今のように気軽に海外へ行けない昭和30年代。貨物船に乗せてもらい、上陸してからはスクーターでパリを目指す。決して裕福な家柄ではなく、金の工面などはいろいろと苦労したことなどを初めて知った。クラシックファンでなくとも知っているカラヤン、バーンスタイン、ミュンシャといった巨匠に教えを乞う。ブザンソン、タングルウッド、ベルリン、ニューヨークといった街のコンクールやオーケストラの指揮者として、ひたすらスコアを読み勉強する日々が綴られている。


指揮者によってオーケストラのアンサンブルの良し悪しが決まる。まさに棒振り屋の腕次第。久しぶりにクラシックを聞くかなと思ったりする。江戸京子(後の妻)、田中路子(欧州在住のオペラ歌手)、広中平祐(ノーベル賞の数学者)といった著名人との出会いも書かれていて興味深かった。


ボクの音楽武者修行 (新潮文庫)

ボクの音楽武者修行 (新潮文庫)

  • 作者: 小澤 征爾
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2024/04/09
  • メディア: 文庫

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アメリカ映画の文化副読本 [読書日記]

「アメリカ映画の文化副読本」(渡辺将人著)を読む。邦画が受賞した今年のアカデミー賞もあり、ハリウッドシネマ関連の一冊を手に取った。外国の映画と言えば、圧倒的に米国産が多い。でも、どのくらい米国社会のことを知っているかというと、意外と知らなかったりする。娯楽映画なら細かい設定は気にしないが、シリアスものだと結構「なぜ」というところがありながら、そこをすっ飛ばして鑑賞しているのだと思う。


例えば、ニューヨークのマンハッタンでも住む地区によって「人種」が違う。ハーレム、アップタウン、ミッドタウン、ダウンタウン。アップタウンでもセントラルパークを挟んで西と東で住人が違ってくる。映画では主人公がどこに住んでいるかが重要で、それによって社会での地位やライフスタイルの描き方が違ってくるという。若い時にニューヨークに行っておけば、もっとハリウッド映画が楽しめたのにと思ったりした。


今年は4年に一度の大統領選イヤー。米国という国はなくて、それぞれの州が小さなクニ。西海岸と東海岸では、文化はまるっきり違う。世界共通語である英語が母語である合衆国の人たちは外国語を習わないのが一般的で、そもそも外国語大学などはないという。外国語を知らなくてもビジネスで困ることはあまりない。習う人もスペイン、フランス、ドイツ語で小学校から英語を習う日本のようなことはない。そのことが米国人にとっていいことなのかどうかは分からないが。いろいろと紹介してあるハリウッド映画を今度の連休にでも見てみようかと思う。


アメリカ映画の文化副読本

アメリカ映画の文化副読本

  • 作者: 渡辺将人
  • 出版社/メーカー: 日経BP 日本経済新聞出版
  • 発売日: 2024/01/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)





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