SSブログ

コメンテーター [読書日記]

奥田英朗の「コメンテーター」を読む。久々のドクター伊良部シリーズ復活。メルカリで単行本を買い、一気読み。伊良部ワールドに浸った。

変態精神科医の伊良部とサディスティックな女王様風看護師マユミの名コンビ。コロナ禍で心の病を抱えた人たちがドクター伊良部の診療科の門を叩く。まさに戦時中のように行動を制限されたコロナ禍の3年間。引きこもり生活をせざるを得ない人たちの日常をネタに短編が編まれた。赤面症とか、広場恐怖症とか、現代的な心の病を、一見突飛な行動療法で治療していく。

今回、看護師のマユミがロックバンドを率いていることを知る。クールビューティーな感じが素敵。現代人の心の闇を、ユーモアたっぷりのキャラに包んで、エンタメ小説に仕上げている。いやいや、奥田英朗は面白いなあと、改めて感心する。


コメンテーター ドクター伊良部 (文春e-book)

コメンテーター ドクター伊良部 (文春e-book)

  • 作者: 奥田 英朗
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2023/05/11
  • メディア: Kindle版



nice!(6)  コメント(0) 
共通テーマ:

兎、波を走る [シネマ&演劇]

NODA・MAP第26回公演「兎、波を走る」を博多座で見た。高橋一生、松たか子、多部未華子ら人気俳優が出るとあって大入り。2度目の野田秀樹作・演出作品だったが、一言で言えば野田秀樹のアタマの中を見せられた、ぶちまけられたという感じ。言葉遊びと記憶と記録が混然となった「野田ワールド」が展開した。

不思議の国のアリスが下敷き。兎を追ってどこかへ行ったアリスを連れ戻そうとする母親が、「妄想するしかない世界」に迷い込む。「もう、そうするしかない現実」と行ったり来たりしながら、不条理な話が進む。

たぶん野田が敬愛する?ブレヒト、チェーホフをもじった劇作家が登場し、劇中劇のような世界を作り出す。成田闘争、過激派のよど号ハイジャック、北朝鮮による拉致事件、AIとVRの世界が舞台に映し出され、時空は螺旋階段のように捩れていく。

兎は「USAGI」で、「USAのGI」というアナグラムの遊び。2023年夏の日本を、世界を、まさに「もう、そうするしかない現実」を妄想の世界として描いた芝居だった。

IMG_0996.jpg
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:演劇