昔名画座のスクリーンで見た「田園に死す」。市街劇という形で40年ぶりに物語の世界に浸った。寺山修司記念館20周年特別公演。J・A・シーザー総指揮・構成・演出・音楽。


寺山の故郷・青森県三沢市。今はテラヤマロードと名付けられた商店街を通行止めにし、舞台とした。通りを堰き止めるように組まれたやぐらと白い幕。顔を白塗りした水兵が手旗信号で幕開けを告げる。寺山自身と思われる学生服の少年、黒装束の男女に続き、異界から来たと覚しき老若男女の行列が。寺山の言葉、音楽、踊りが渾然となって、観る者を惹きつける。


商店のウインドーやガソリンスタンドにも寺山の短歌や言葉が掲げてある。路上もチョーク書きのキーワードで埋め尽くされている。観客は寺山のお面をつけ、歩きながら、それらを見て口ずさみ、自ら書き込む。


旧十和田観光電鉄の駅舎や、寺山記念館でもパフォーマンスがあり、寸劇や現代舞踏、朗読、歌唱などで寺山の多彩な作品を表現した。記念館では、マンガと寺山のつながりに焦点をあてた特別展示もあった。


言葉へのこだわり、言葉が世界を変えるのだと心底信じ、それを実践した天才作家の精神世界を覗いた一日。公会堂でのフィナーレでは、観客が舞台に上げられるハプニング的演出。まんまと一杯食わされ、つい笑ってしまった。


東北の厳しい自然と、豊かな文化的風土。米軍基地との共存。三沢という街を歩き回りながら、寺山作品に触れられたのは、何よりだった。