太宰治の遺作「人間失格」の誕生秘話をもとにした作品。ネクラな作家と忌避していた太宰も歳を重ねると、その作品の意味が分かったりして、近年ちょっとしたマイブーム。ヤバ過ぎる作家の生態といった惹句もあってか、新宿ピカデリーでは若いカップルの客が多かった。

蜷川実花監督の作品は、映像の美しさ、特に赤い色が印象に残っているのだが、今回は血の色。結核を病んだ太宰の咳と吐血がこれでもかと映し出され、見ていて息苦しくなる。妻と愛人、夫婦愛と恋愛、家族と創作。流行作家と持て囃される太宰の葛藤、まさに身を削り血を吐きながら書き続ける、鬼気迫る姿を血の色で表現したのだろう。

坂口安吾、檀一雄が出てきて、デカダンな香りを醸し出す。志賀直哉、川端康成も同時代に生きていたのか。三島由紀夫が出てきて太宰を批判するくだりにはびっくり、この場面は実話なのだろうか。日本文学史の知識が少しあると楽しく見られる。あと、スカパラのエンディング曲がいいネ。