鴻上尚史作・演出で2年ぶりの再演を、下北沢・本多劇場で観た。風間俊介、中村中、片桐仁の再演組に、松井玲奈が新加入。テンポのいい、大人のラブコメといったところだが、しっかり完成された舞台だった。もちろん大いに笑い、ぐっと考えるところもあった。


鴻上さんによると、ベター・ハーフとは、ギリシャ時代に生まれた考え方で、天国で一つだった魂が現世で男と女の二つに分かれたと、プラトンも紹介している。現世で自分の魂の半分と出会う、それがベター・ハーフで、英語圏では夫婦や恋人のことを、ちょっとおしゃれにそう呼んだりする。


元SKEの松井は、デリヘル嬢役で「フェ×××」とか、「ス××」とか、エッチな言葉を大声で連発するシーンが続く。かつて清純路線で売っていた元アイドルに、あえて過激なセリフを言わせてみたい、そんな演出家の少しサディスティックな欲望を感じる。そのギャップに客席は大いに盛り上がったけれど。


かつてトランスジェンダーであることをカミングアウトして話題になった女優・シンガーの中村は、自身の経歴そのままの役。ピアノ弾き語りの歌声は、結構艶っぽくて、「サントワマミー」なんか絶品だった。片桐、風間のボケツッコミもバッチリで、はまり役。


作品の背景には、トランスジェンダーへの偏見や、貧困女子の実態などがあるが、心に残るのはベター・ハーフを探し求める男女4人の必死なまなざし。老若男女、だれが観ても「恋愛」というものがしたくなる。