深刻化する格差社会における貧困。行きすぎた市場主義、「小さな政府」の国では、手厚い福祉ではなく、自立支援へと社会保障制度は傾斜している。自己責任で食べていく。それは確かに理想かもしれないが、こぼれ落ちた人たちを救うのは、もはや公的機関ではなく、NGOの仕事になっている。映画の舞台の英国では、日本の生活保護とは違い、フードバンクで食べ物を配給する形の現物支給が主流だという。

作品は、病気で働けなくなった初老の男と、母子家庭の親子が、互いに助け合い、何とか生きようとする姿をリアルに描く。役所でたらい回しにされたり、ネットでの手続きに戸惑ったりする様は、日本の役所でもありそう。いったん会社から離れて職を失えば、自らもこんな風に困窮するのは、もはや非現実的ではない。そんな時代になってしまった。ケン・ローチ監督。