岩井秀人さんは数年前、向田邦子賞、岸田戯曲賞を相次いでとった演出家。平田オリザさんの青年団の演出部に所属し、そこから頭角を現した。劇団ハイバイを主宰し、個性的な俳優としても活躍している。

雑誌「すばる」に沢美也子さんが劇評を書いていた。それによると、物語の舞台は北九州市。石炭と鉄で栄えて水質汚染がひどく、今は寂れた街という設定に、すぐ北九州市を思い浮かべたのだが、やはりそうだったか。もともと松尾スズキさんの作と勘違いして、松尾さんの出身地である北九州市が舞台なんだと思いこんでいたんだけど。岩井さんは北九州市まで取材に訪れ、公害克服の歴史に関心を抱いたという。

岩井さんによると、自身の作品と九州という土地柄は親和性が高い。父親の家庭内暴力を描くと、東京あたりの公演では引くのに、九州では結構笑って見てくれる。なぜ笑うのか聞くと、「だって、うちにもいるから」と答えが返ってきたりするという。そうかしらと、思わなくもないが、あらためて岩井作品を見てみようかと思った。