唐組の第63回公演「ジャガーの眼」を雑司が谷の鬼子母神・紅テントで見た。1983年(昭和58)に亡くなったアングラ演劇の旗手・寺山修司へのオマージュとして、唐十郎が創作した。寺山が愛用したジーンズサンダルが巨大化して冒頭から出てきたり、劇中でも詩人・寺山の名が何度か出てくる。寺山の最後の演劇論集「臓器交換序説」にもヒントを得たといわれる。 今回の公演は、内野智、月船さらら、大鶴美仁音が客演していて、いつもよりパワーアップした感じ。移植された眼球の角膜に残るかつての恋人の残像。謎の探偵社や、怪しい医者らが絡まって、大活劇を繰り広げる。 雑司が谷の初日ということで、なかなかの入り。5月のこの時期の公演は暑くも寒くもなく、つくづく観劇日和で幸せな気分になる。2時間余りの公演はカタルシスを感じさせる大団円で幕。出演陣の紹介と挨拶の後、舞台の向こう、境内の暗闇に役者たちがそれぞれはけていく。やり切った感のある、この感じがたまらなくいいなあ、と思う。