東京大学大学院法学政治学研究科准教授の平野聡さんの新書。しばらく積ん読だったのを読了した。国内では嫌中の人が増え、日中関係はかつてなく冷え込んでいると言われる。とはいえ海を隔てた近隣の大国から、長い歴史の中で様々なものを移入してきた日本。これからも付き合い続けなければいけない国だ。


本書は、なぜ中国が「反日」なのかを歴史をたどりながら説明する。「中国は国ではない。巨大な文明である」と、戦前の東洋史研究家である内藤湖南や矢野仁一は説いたというが、要するに長い間、大陸ではいろんな王朝が「天下」をとり、周辺国は朝貢国であった。唐や明、清などの皇帝たちは先進の文明を広め、周辺国を教化してきた歴史がある。欧米の列強によって清は崩壊し、中華民国、中華人民共和国になったが、その思考法は王朝の頃と変わらない。


いち早く欧米流の近代化に成功した日本。国際法の世界に遅れて参入した中国は、ルールを知らないうちに日本が先占したという理由で尖閣諸島の領有を主張している。友好条約を結んだのだから仲良くしようよ、という風にはなかなか行かないのが国際政治、外交の現実だと思い知らされる。





「反日」中国の文明史 (ちくま新書)



  • 作者: 平野 聡

  • 出版社/メーカー: 筑摩書房

  • 発売日: 2014/07/09

  • メディア: 新書