世界60数カ国を放浪したという宮内勝典さんの新作。その該博な知識と体験を散りばめ、戦争をやめることが出来ない人間の業を描いた。



こんな街、土地があったのかと思ったのは、まず、ベルギーのギール。精神病の人たちが巡礼としてやって来る街で、中世から一般家庭に下宿し、共に暮らしている。米ニューヨーク州の北部、カナダ国境近くには、イロコイ連邦があり、いわゆるインディアンの部族の独立自治領として存在する。ラグランジュ・ポイント、太陽と地球、月の引力がつりあうところ。知らなかった。


物語の主舞台の沖縄は幾度か訪ねたが、波照間島はじめ琉球弧の離島については初めて聞くことが多かった。とくに戦争や核兵器の話は、地理に照らし合わせた細かい歴史的事実について、何とあやふやな理解しかしてなかったことかと痛感した。


それにしても見て見ぬフリをする現実の何と多いことか。シャーマンの口から語られる、残酷な戦争の話。対極にある豊かな自然と生きる喜び。大きな世界観を提示した作品だった。





永遠の道は曲りくねる



  • 作者: 宮内勝典

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社

  • 発売日: 2017/05/17

  • メディア: 単行本