壁 [読書日記]
安部公房の芥川受賞作「壁」を読む。1951年、27歳の時の受賞作品。解説によると、砂漠や壁といった安部の好むモチーフが出ていて、その後の作品につながっていったという。
S・カルマ氏の犯罪、バベルの塔の狸、赤い繭の3部構成だが、第2部のバベルの塔の狸が一番面白かった。影を盗まれて透明になった男(眼だけは見える)と、影を食べた狸。寓話の建て付けで人間の実存について語る。
どの物語にも壁(都会の片隅の狭い部屋の中など)が出てくるのだが、読んでいて村上春樹の「街とその不確かな壁」に出てきた風景を頭の中に思い描いてしまった。シュールレアリスムの世界観、どこか通じるものがあるような気がする。
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