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イケズな東京 [読書日記]

昔からファンの井上章一さんの新書「イケズな東京」を読了。建築史家である井上さんと、東京在住で京都市美術館長の建築家・青木淳さんのリレーエッセイと対談を収録した一冊。コロナ禍の3年に新聞に掲載されたエッセイに、後で対談を加えた形だが、息苦しいコロナ自粛の日々を思い出しながら読んだ。

コロナの頃に言われたのは、在宅リモートでの仕事が定着し大都会東京に本社を置く意味はない。企業の地方分散がリードする形で、皮肉にも東京一極集中是正が進むのではないかということだった。その点について井上さんは、歴史的な観点から事はそう簡単ではないと指摘する。かつて大名が天守閣を建て威厳を示したように、企業も東京に城を持つことがステイタスであり、その風潮は簡単には崩れないだろうという。

東の京である東京を、古からのみやこ京都と比較しながら、都市開発のレガシーにも話が及ぶ。五輪はもともとパリ万博の余興として始まったという蘊蓄になるほどと思う。昨今は五輪の方が万博より注目される世界イベント。今や最先端技術の発表の場は万博ではなく、アップルやトヨタのようにそれぞれの企業がネットで世界に配信する時代になった。注目度もすっかり落ちている中で、本当に2度目の大阪万博をやる意味はあるのか。パリは万博で作られた街を大事に育んできた。次のパリ五輪では、その施設、街全体を会場にして競技を行う計画だ。大勢の人ではなく、好きな人たちが好きな競技を見る。ベルサイユ宮殿で馬術が行われる、その背景が歴史的遺産。新たな施設を作りまくった東京五輪より、一歩先を行っているなあ。


イケズな東京-150年の良い遺産、ダメな遺産 (中公新書ラクレ 751)

イケズな東京-150年の良い遺産、ダメな遺産 (中公新書ラクレ 751)

  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2022/01/07
  • メディア: 新書



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