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山の人生 [読書日記]

遠野物語と対をなすといわれる柳田国男の「山の人生」を読了。神隠しや天狗、山姥など怪異談として伝承されている話の起源を探り、そこに日本列島の先住民の姿を見出す。大正時代に書かれた著作だが、すでにその頃には忘れられた物語になりつつあった数々のエピソードを各地の資料や聞き取りによって掘り起こしている。山人(やまびと)と呼ばれる人たちがいたことなど思いもしなかったが、昔話にもそうした痕跡があることに驚いた。

我々の先祖たちは、怜悧で空想力豊かな子どもが時々変になって、凡人の知らぬ世界を覗いてきてくれることを望んでいた。たくさんの神隠しの不可思議を信じようとしていた。女性が忽然と姿を消したのは、山人が嫁として攫っていったケースも多かったのではないかと推測も。以前聞いたことのある「サトリ」という怪物(人の腹で思うことをすぐ覚って、逃げようと思っているななどと言い当てる)が山中にいる話も出てきて、いろんな事実の断片が様々な言い伝え、民話、迷信などとして残っているのを知った。

山で生活していた先住民がいなくなったのは、同化政策や百姓社会に併合されたり、人知れず土着したりしたらしい。それでも明治の頃までは山中を漂泊していたらしく、目撃譚も多く残っているという。アジアを中心に多くの血が混じっていると思われる日本人だが、山人の血を濃く受け継ぐ人もきっといるに違いいない。


山の人生 (角川ソフィア文庫)

山の人生 (角川ソフィア文庫)

  • 作者: 柳田 国男
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2013/01/25
  • メディア: 文庫



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