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失われた時を求めて〜囚われの女、逃げ去る女 [読書日記]

「失われた時を求めて」の第5篇「囚われの女」、第6篇「逃げ去る女」を読了した。恋人アルベルチーヌを自宅に住ませ、外出するにも行動を監視する日々。彼女の同性愛を疑う語り手の葛藤が、じりじりとした思いが延々と語られる。

結局は嫉妬であり束縛であり、愛の一形態なのだろう。100年以上前の時代であっても現代人と、その思いは変わらない。訳者の鈴木道彦は、囚われの女Ⅱの「はじめに」で、「恋人同士がお互いに嘘をつき、だましあい、相手の心を誤解しあう物語の中に、芸術を通しての理解の可能性が執拗に考察され」ると指摘。複雑な絵巻物の中で一本の琴線のように続いているのは、「芸術の可能性」というテーマだと喝破している。なるほどと頷いた。

医学は「自然と肩を並べ、患者を床につかせ薬の使用を続けさせる。人工的に接木された病気は根を下ろし、本物の病気になる。自然の病気は治るけれど、医学の作り出す病気は治らない。医学は治癒の秘密を知らないからだ」。

作家ベルゴットの言葉「おれは小娘たちのために億万長者以上の金を使ったが、彼女らの与える快楽や幻滅のおかげで本が書けてお金がもらえるのだ」。彼は金を愛撫に変え、愛撫を金に変えるのが楽しかったのだろう。


失われた時を求めて 9 第五篇 囚われの女 1 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)

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  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2007/01/19
  • メディア: 文庫



失われた時を求めて 10 第五篇 囚われの女 2 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)

失われた時を求めて 10 第五篇 囚われの女 2 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)

  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2007/01/19
  • メディア: 文庫



失われた時を求めて 11 第六篇 逃げ去る女 (集英社ヘリテージシリーズ)

失われた時を求めて 11 第六篇 逃げ去る女 (集英社ヘリテージシリーズ)

  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2007/01/19
  • メディア: 文庫



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