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ハンチバック [読書日記]

遅ればせながら、市川沙央さんの第169回芥川賞受賞作を読む。筋疾患先天性ミオパチーによる症候性側彎症の作者が自らの生活を題材に常日頃思っていること、頭の中の考えを文章に叩きつけた作品だ。100ページ足らずの短編だが、この病気を患っていない人にはわからない苦しさ、体が思うように動かないもどかしさがひしひしと伝わってくる。

作品によると、人工呼吸器を使い電動車椅子で移動する。喉に痰が詰まらないように常に気を付けながら、創作活動を行うのだろう。ケアする人がいるとはいえ、在宅のためスタッフの都合が付かなければ、シャワーも使えない思いをする。障害がある人のケアをするスタッフの人材不足はとても深刻なのだ。

「生まれ変わったら高級娼婦になりたい」という主人公。障害があるなしに関係なく、誰もが平等に暮らせる世の中はまだまだ遠い。ダイバーシティという言葉が日本語に定着するのはいつのことだろう。そんなことをつらつらと考えたが、作者が言いたかったのはこんなことではなかったのだと思う。「せむし」というタイトルからして、自虐的な構えをしながら、世間に一発食らわせる企みがあったのではないか。


ハンチバック (文春e-book)

ハンチバック (文春e-book)

  • 作者: 市川 沙央
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2023/06/22
  • メディア: Kindle版



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