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金子文子と朴烈 [シネマ&演劇]

渋谷のシアター・イメージフォーラムで封切り日に見た。映画館周辺には旭日旗を掲げる街宣右翼と警察警備課がいて、何事かという雰囲気。日韓関係が最悪と言われる中、反日的な映画の上映はけしからんということらしい。表現の自由という言葉を持ち出すまでもなく、上映を妨害しようとする動きは困ったものだ。

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関東大震災の時の朝鮮人虐殺を扱っていてテーマは重い。植民地支配に抗う、朝鮮人のテロリストと日本のアナキストというカップル。進んで囚われの身となり、大逆罪の法廷で自らの思いを訴える。朴烈はイ・ジェフン、文子はチェ・ヒソが演じるが、日本語とハングルを使い分けながら好演している。特に快活な文子を演じるチェ・ヒソは本当にチャーミングだった。韓国では235万人を動員するヒット作となったらしいが、イ・ジェフン人気と純愛映画として観る人が多かったようだ。

金子文子という人のことは今回、初めて知った。23歳で獄死したが、その短い人生を獄中手記「何が私をこうさせたか」に残している。文芸評論家の斎藤美奈子さんのコラムによると、文子は今でいう児童虐待の犠牲者で、出生届さえ出されず子供の頃は無戸籍だった。親戚に引き取られ朝鮮半島で悲惨な日々を送ったという。その後、文子は東京へ。朴の詩に惹かれて同棲し、不逞社という結社を立ち上げる。映画はこのあたりからのお話。
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映画には、金守珍さんはじめ新宿梁山泊の面々が出演していて、初日午前の上映後、舞台挨拶があった。日本での上映を実現した太秦の代表は、右翼の抗議行動に触れ、「映画は日本人にとって痛い内容も含んでいるが、こんな作品をしゃあしゃあと上映できるような時代にならないといけない」と話した。教科書では教えない事実を知り、かつて日韓の若い男女が命を燃やした物語として記憶することが、相互理解への一歩になると思う。


何が私をこうさせたか――獄中手記 (岩波文庫)

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常磐の木 金子文子と朴烈の愛

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