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世界まちかど地政学 [読書日記]

藻谷浩介さんがネットに連載していた世界弾丸ツアー記。コロナで国内外どこにも遠出できない日々が続く中、読書で海外に行った気分になる。ドイツの北方領土カリーニングラード、アイルランド、コーカサス3国、スリランカ、ミャンマー、ボリビアなど。沢木耕太郎や小田実の旅行記に心躍らせた昔をふと想い出しながら、現場に行かなければ分からない事実があることを改めて思う。

藻谷さんの主催する東日本大震災支援ツアーにかつて参加したことがあるが、彼の歴史と地理の知識に基づいた講釈は実に面白かった。このツアー記も観光地巡りではなく、公共交通機関を使い足でとにかく歩き回る。それぞれの土地には、政府が外国人に見せたがる「グラマラス」な場所と、その対極にある庶民の生活する場所があると、劇作家・山﨑正和さんは言う。そのポリシーで行った先の国の街を探検するという。

地政学はドイツで発達した学問であることから国家間の戦争を論じるイメージがある。本書では、歴史認識と21世紀の現場で起きていることを観察することを踏まえた地政学として論じている。ハードパワーだけでなくソフトパワーに重きを置く地政学。海外を歩き回るのはなかなかできそうにないが、国内を歩いて観察する旅をいつかやりたいと思った。


世界まちかど地政学 90カ国弾丸旅行記 (毎日新聞出版)

世界まちかど地政学 90カ国弾丸旅行記 (毎日新聞出版)

  • 作者: 藻谷 浩介
  • 出版社/メーカー: 毎日新聞出版(インプレス)
  • 発売日: 2018/03/30
  • メディア: Kindle版



世界まちかど地政学NEXT

世界まちかど地政学NEXT

  • 作者: 浩介, 藻谷
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2019/04/25
  • メディア: 単行本



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ひまわり [シネマ&演劇]

ウクライナを舞台にした「ひまわり」を見る。ロシアのウクライナ侵攻を機に全国で上映会があっているが、アマゾンプライムなら100円。確か子供の頃にテレビの洋画劇場で見たような気がしていたが、すっかり忘れていた。ソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニ主演、アントニオ・デシーカ監督作。

第2次世界大戦でロシア戦線に送り込まれた男。極寒の地で凍死寸前を地元の娘に助けられそのまま一緒に暮らす。残された妻は生死も分からぬままただ男の帰りを待ち続ける。スターリンが死去し時代が変わって、妻は意を決してロシアに夫探しの旅へ。そこで辿り着いたのは、見知らぬ女と家庭を築いた夫だった。

映画ではウクライナはソ連の一地方として描かれる。ロシアと思っていたものがウクライナの文化だったりすることを今回の戦争で知った。ウクライナは小麦やひまわり油(日本ではチョコレート製造に欠かせないらしい)の一大産地であることも知った。どこまでも続くひまわり畑に切ないメロディーが流れる。多くの兵士たちを埋葬した十字架が映し出され、麦畑やひまわり畑の下にはロシア人やイタリア人が眠っているという。死に別れ、生き別れ。愛する人との間を引き裂く戦争の残酷さは昔から変わらない。


ひまわり HDニューマスター版 [DVD]

ひまわり HDニューマスター版 [DVD]

  • 出版社/メーカー: エスピーオー
  • 発売日: 2009/12/02
  • メディア: DVD



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パンとサーカス [読書日記]

島田雅彦さんの新刊「パンとサーカス」を読む。西日本、東京・中日、北海道新聞に連載した小説。暗愚の安倍から菅政権の頃、閉塞感に覆われた国を舞台にしたインテリジェンスサスペンス仕立てのエンタメ政治小説だ。コントラムンディ、ラテン語で「世界の敵」をキーワードにテロと革命の夢が疾駆する。

どこまで本当か分からないが、CIAやKGBの活動はよく小説・映画で知っている。でも中国国家公安部の暗躍はあまり意識したことがなかった。今や軍事や経済で米国を凌駕しようとする中国。ITはじめ産業スパイを主とした工作員は日本中にウヨウヨいるのだろう。

戦後、米国の軍隊が駐留し実質的には属領のような国になった。政治的主体性はなくいつも米国の顔色を見ている。以前読んだ白井聡の「国体論」の論旨をストーリー仕立てにしたのが、島田さんのこの物語だと思った。

・「善きサマリア人法」とは、急病人などを救おうと善意の医療行為をとった場合、失敗してもその責任は問われないというもの(日本では適用されにくい)。
・ユロージヴァヤとは、ロシア語で「聖なる愚者」。
・奇跡を待望する人は多いし、愚か者もうんざりするほど多くいるが、奇跡を起こそうとする愚か者はほとんどいない。ゆえに奇跡は永遠に起きない。


パンとサーカス

パンとサーカス

  • 作者: 島田雅彦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2022/03/23
  • メディア: Kindle版



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文明の生態史観 [読書日記]

梅棹忠夫の名著、文明の生態史観を読む。生誕100年の帯がついた中公文庫。ユーラシア大陸を第一地域と第二地域に分けて、生態学の視点から国の発展のあり方を分類してみせた。温帯の日本と西ヨーロッパの類似性を指摘する論考は、昭和30年代に書かれたとは思えない。まだ自由に海外旅行など行けなかった時代ゆえに大きな反響を巻き起こしたのも頷ける。

世界の4大文明が生まれたのはいずれも乾燥地帯の周辺。大国が生まれてはそれまでの国を破壊するパターンを繰り返し、社会が安定することはなかった。文明国の辺境にあった日本と西ヨーロッパは大国に侵略されることなく、封建制を経てブルジョアを育成し、植民地を持つ列強となり、民主主義の国になった。歴史学者トインビーの名前を久しぶりに見て、そう言えば昔流行ったなあと感慨に浸った。

確かにと思ったのは、日本がアジアの一員でありながら東南アジアの国々とは全く異質な国であるということ。それは芸術、美的感覚にも現れていて、古い美術品や仏像、建築に価値を見出すのは日本特有で東南アジアにはないという。仏像は古くなれば綺麗に塗り直したりしていつもピカピカ。絵を家の中に飾るという習慣もあまりない。宗教についても生活の中に根付いているアジアの国々と、日本は全く違う。いい悪いではなく、アジアにおける日本の異質性がよく分かった。


文明の生態史観 (中公文庫)

文明の生態史観 (中公文庫)

  • 作者: 梅棹 忠夫
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 1998/01/18
  • メディア: 文庫



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西鉄サイクルトレイン [雑感]

3月から本格運行を始めた西鉄大牟田線のサイクルトレインを使って休日サイクリングに行った。事前にネット予約して自転車持ち込み料300円をカード払い。最寄りの二日市駅発8:47発の特急に乗る。改札口ではスマホでQRコードを読み取り駅員さんがチェック、自転車の固定バンドをもらう。自分の乗車料金は定期でOK。ホームへはエレベーターで昇り降り、指定の乗車位置で待つ。まもなく特急が到着、乗降ドア横の手すりに自転車を立てかけバンドで固定し久留米まで。同じ列車にはもう一人サイクリストが乗っていたが、土曜の朝早いこともあり空いていた。

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久留米駅で固定バンドを返し、乗車の時と同様にQRコードでチェック、改札口を出る。まず以前から気になっていた久留米成田山へ。車窓からいつも見える母子観音像、駅から3号線を30分ほど走ると、住宅街の向こうに巨大な立像が出現した。奇観である。千葉の成田山の分院になるらしいが、こういうものを建立して衆生を集めるのが昔からの戦略なのだろうと納得する。ハンドルをとって返し筑後川河川敷へ。大牟田線の鉄道橋あたりから上流へ遡る。この筑後川サイクリング道路は一番のお気に入り。今の季節は菜の花などが咲き、堤防道路沿いには桜並木もあって、実に気持ちいい。ツバメやサギなどさまざまな鳥が巣を作っているらしく、囀りと風の音だけを聞きながらペダルを漕いだ。ゴープロでも買ってサイクリング動画を撮るのも一興かなと思ったりする。

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のんびり2時間程で目的地の原鶴温泉へ到着。道の駅で昼飯におにぎりと桜餅を買う。そばに力士の銅像がある。第15代横綱の梅ヶ谷藤太郎。明治に活躍した地元のヒーローだという。自宅までは3時間ほどかかって少々バテたが、春の1日、サイクルトレインのおかげで少し足を伸ばせたツーリング体験だった。

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