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風のコトダマⅡ [ミュージック]

「松本隆の裸にされた言葉たち」というサブタイトルがついたライブを六本木・東京ミッドタウンのビルボードライブ東京でみた。松本が作詞した往年のヒット歌謡の歌詞を若村麻由美が朗読し、清塚信也がアドリブで伴奏をつける。メロディから解放された詩が浮かび上がるという趣向。

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太田裕美の木綿のハンカチーフ、中森明菜の二人静、松田聖子の瑠璃色の地球、はっぴいえんどの風をあつめて、など。大概は知っている曲だけど、詩を意識して聴いたことがなかった。確かにあたらしい試みかもしれないけれど、やっぱり元歌が聞きたい。そんな欲求不満が残った。

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開演までステージ前のテーブルでビールとピザで夕食。おすすめのビールはなかなかうまかった。貯まったぴあポイントで行ったので、階上の後ろの方の席かと思っていたら、1階自由席。相席なのは仕方ないか。第2部は古典。藤舎貴生の和笛で源氏物語や古事記に題をとった楽曲をたんのうした。

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特別展 縄文 [アート]

「特別展 縄文~1万年の美の鼓動」を上野の東京国立博物館でみてきた。酷暑の中、人出が少ないのを狙って午前中に行ったが、皆同じことを考えるらしく、それなりの混雑。涼しい館内で、お目当ての土偶と縄文土器をたっぷり鑑賞した。

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火焔型土器、縄文の女神、遮光器土偶、縄文のビーナス。これだけそろって見る機会はない。岡本太郎によって再評価された縄文の美。縄文土器のあのデザインは同時代の世界を見回しても異彩を放つ。1万点も出土していながら、いまだ謎が残る土偶は実に多彩な造形であることが分かった。


土器にしろ土偶にしろ、単なる実用品を超えて、子孫繁栄や生活の豊かさを願い、宗教的な役割を担うアイテムだったのだろう。現代人が眺めて、そのデザイン性に惹かれ、面白く思うのはやはり、その根源にある素朴な願いに共通する思いを感じ取るからだろうか。ノーベル賞作家の川端康成は土偶をそばに置いて愛でていたという。日本列島に住んだ祖先の精神性を強く意識する展覧会であった。

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平成館の前庭には森鴎外の肖像プレートが。かつてこの場所に館長としていたらしい。

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日本文学盛衰史 [シネマ&演劇]

高橋源一郎さんの原作を、平田オリザさんが演出した青年団第79回公演を吉祥寺シアターでみた。「文学とは何か、人はなぜ文学を欲するのか」。明治の文豪たちが登場人物として出てくる。森鴎外、夏目漱石、北村透谷、坪内逍遙、樋口一葉、島崎藤村、田山花袋、正岡子規。作品を読んだことはなくても教科書でみたことのある名前がずらり。彼らが集まったお通夜の場で、世間話風に話に花を咲かせる。

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いわゆる文壇の中にはもちろんヒエラルキー、秩序があり、好き嫌い、派閥もあったであろう。そんな人間的な世間の中で、話し言葉による小説を切り開いていく。自分の内面、こころを言葉によって表現する。作家たちの模索、苦悩しながらの創作が今の日本語を作り上げてきた。


青春群像劇という形をとりながら、ブンガクというものの役割や、現代における文学の役割を問う。原作の高橋さんは、舞台をみて「こんな鉱脈があったとは」と感心している。原作を一度、読んでみようと思う。平田さんは会場の受付にいて、終演後もロビーで感想を聞いていた。

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焼肉ドラゴン [シネマ&演劇]

かつて演劇賞を総なめにした舞台を鄭義信監督が初めてメガホンをとり、映画化した。TOHO日比谷でさっそくみた。昭和の高度成長期、万博を前にした大阪が舞台。働けば豊かになると信じた、幸せなころの日本人を描いた「三丁目の夕日」とは対極の物語。在日の人たちの喜怒哀楽を描く。


真木よう子、井上真央、桜庭ななみの三姉妹に大泉洋がからむ。焼肉屋のホルモンくさい店内で、恋をして、けんかして、飲んで、にぎやかな日常。戦争にかり出され、敗戦を迎え、故郷を失い、日本で生きていくしかない朝鮮人。小さいころには近くにそんな地区があって、親にはあまり近づくなと言われたことを思い出した。


厳然として残る差別の実態を、それと闘い、たくましく生きる焼肉屋一家の姿を描くことで訴える。再開発で立ち退きを迫られ、最後は北へ、南へ、家族はバラバラになる。キム・サンホ演じる父親は「離れていても家族」と涙ながらにつぶやく。絆とかいう言葉ではなく、助け合って生きる人々の「血の濃さ」みたいなものを感じた。


焼肉ドラゴン (角川文庫)

焼肉ドラゴン (角川文庫)

  • 作者: 鄭 義信
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/05/25
  • メディア: 文庫

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パンク侍、斬られて候 [シネマ&演劇]

町田康原作、宮藤官九郎脚本ということで、公開初日に迷わず見に行った。石井岳龍監督の映画は昔の名前でやっていたころ以来。現代社会に対する監督の見方、世界観を反映している。ハチャメチャで前衛的、アーティスティックな映像もあって、これは映画でしかできないよなあ、と納得した。

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登場人物がそれぞれ特異なキャラ。マンガというか、ゲームのキャラといった方が適切かも。主演の綾野剛は今作もキレがいい。まっすぐな殿様役の東出昌大、このおかしみは好きだ。朝ドラの秋風センセイで人気の豊川悦司もイイネ。


紅一点の北川景子は結婚して、表情が柔和になった。「ろん」という娘役、情感たっぷりの踊りが印象的だった。ラストはまあ、予想できたかな。猿の惑星を思わせる猿軍団、現代文明への戯画的な風刺、それ自体をパロディーとしておちょくっているのだろうね。


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